“ブラジルの水俣病”と呼ばれる健康被害 ~南米アマゾン 先住民の子どもたちに異変
TBS2023年2月26日(日) 06:00
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/347401
■子どもたちから検出される高濃度の水銀
冒頭で紹介した、障がいのある8歳のアレックスくんは、2年前、毛髪に含まれる水銀の検査を受けていた。ブラジルの国立研究機関フィオクルズによる調査だ。
「1グラムあたり、6.2マイクログラム」
ムンドゥルク族の多くの子どもたちから、高濃度の水銀が検出されている。別の集落、サウレ・ムブイ村に住む9歳の少女、ヒオクレア・サウさんからは、「かなり高い」とされる数値、22.1マイクログラムの水銀が検出されていた。
ジェニングス医師によれば、先住民地域の子どもたちに、大きく分けて3つの症例があるという。▽歩くことができない。体を自由に動かすことができない。▽抹消神経が損傷したことにより感覚の異常がある。▽視覚障害や集中力不足、平行感覚の異常などがある。
後編
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/347408
■拡大を続ける金の違法採掘
金の採掘過程で、大量の水銀が使用されていると指摘されている。金を含んだ土砂に水銀を混ぜると、一部に金が吸着する。この塊を熱して水銀を蒸発させると金だけを取り出すことができる。
蒸発した水銀は大気中に放出される。また金が吸着しなかった大量の水銀は、そのまま川に捨てられるという。
この地域の金の採掘に、2年間で100トン以上もの水銀が使われた、との現地大学による推計もある。その水銀で汚染された魚を先住民が食べることで、水銀が身体に取り込まれているとみられている。
■違法採掘業者が取材に応じた
??水銀は先住民の子どもに健康被害をもたらしていると指摘されている。それでも水銀の使用を続けますか?
「水銀は使ってはいるが、外部に流さないような仕組みにしている」
「だから、環境は破壊していない」
その水銀は大気中に出ない仕組みにしていると説明した。ただ装置などは現場で見当たらず、「環境を汚染していない」という確たる裏付けを確認することはできなかった。
■先住民ムンドゥルク族の訴え
こうした違法業者の言い分について、ムンドゥルク族のジュアレス首長に伝えるとこう反論した。
「ガリンペイロが言っていることは事実ではありません。彼らは今も水銀を使っています。
箱のようなもののなかで金を焼きますが、その時に煙が出ます。この煙が水銀です。煙を外に出さないようにする方法はありません。
最近も、川で金採掘をしている人が金を焼いているところを見ました。煙が出て、それが下に落ちて水銀になります。ガリンペイロは金採掘を止めたくないので、今は水銀を使わないと言っているだけです」
ジュアレス首長は危機感を一層強めている。
「金の採掘によって、魚が汚染されています。汚染された魚を食べることで、私たちも汚染されます。それが現状です。いま、私たち先住民は、自分たちの健康をとても心配しています」
そのうえで、水俣病を経験した日本への期待も述べた。
「私たちは、多くの子どもが障がいをともなって生まれていることを、すでに知っています。外国、日本の人々が、私たちの問題を理解してくれることを期待しています」
日本の水俣病は、1950年代前半の患者発生から、原因物質を確定するまでに、20年近くを要した。
アマゾン先住民の子どもたちに広がる健康被害でも、原因の解明に向けた詳しい調査が求められている。日本の知見を活かすことはできないだろうか。
今年1月に就任したブラジルのルラ大統領は、違法採掘取り締まりを強化する姿勢を見せている。現地メディアによると、違法採掘による水銀汚染などから、
先住民ヤノマミ族で、死亡や健康被害が相次いでいるとして、最高裁が1月30日、ジェノサイド(大量虐殺)などの疑いで、ボルソナロ前政権の関係当局の捜査を検察などに命じたという。