神戸市に研究拠点を置き、小型の人工衛星を使った宇宙実験ビジネスに乗り出す新興企業「IDDK」(東京)が、骨の細胞を含む魚のうろこを宇宙に打ち上げ、培養・観察する実験を2027年にも実施する。
金沢大などとの共同研究で、将来、人が宇宙で生活する上で課題となっている骨密度の低下などの症状の予防・治療薬の開発に役立てたいとしている。
(村上和史)
同社などの研究チームが14日、発表した。実験後、魚のうろこ試料を特殊なカプセルで地球に帰還させる「サンプルリターン」も検討する。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)などによると、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士は、ほぼ無重力で骨に負荷がかからないため、骨粗しょう症患者の約10倍の速さで骨の量が減少するとされる。筋肉の量も減るため地球帰還直後の歩行介助や、カルシウムなどの摂取が必要になるという。
魚のうろこには古い骨を取り除く「破骨細胞」や新しい骨を作る「骨芽細胞」があり、人の骨の再生モデルとして使われている。計画では、金魚やゼブラフィッシュのうろこを入れた培養装置を人工衛星に搭載。宇宙に打ち上げて、各細胞の活動の様子をスマートフォンのカメラのような機器で観察し、画像データを地上に送信する。
チームの鈴木信雄・金沢大教授(環境生理学)らは10年、ISSで行ったうろこ実験で、睡眠などを促すホルモン「メラトニン」の不足が骨の再生に悪影響を与えている可能性を見いだしている。今回の実験では、ISSの実験時よりも長期間の観察が可能で、メラトニンの予防・治療効果を検証するという。
ISSは30年にも運用終了を迎える。
鈴木教授は「ポストISSの実験環境として人工衛星は有望だ。人が宇宙で活躍できる技術を確立させるため挑戦していきたい」と話している。
[読売新聞]
2024/05/14 10:56
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240514-OYT1T50043/