外国船から水産資源を守れ
中国などの外国漁船が日本の排他的経済水域(EEZ)に迫り、漁獲を拡大している。日本のEEZや領海に侵入するケースも目立つ。外国船の漁獲急増を放置すれば水産資源は減少し、日本の漁獲量に影響しかねない。政府は対策を急ぐべきだ。
水産庁によれば、沖縄県西方の東シナ海では2万隻近い中国漁船が操業を続けている。中国船は乱獲で沿岸の漁業資源が減り、資源の豊かな日本近海に押し寄せるようになったとみられる。
2012年以降は台湾に追随する格好で中国の漁船が日本のEEZに近い北部太平洋の公海で操業し始め、サンマやサバを大量に漁獲している。中国の提出資料による公海域でのサンマ漁獲量は昨年、6万3千トンと12年の31倍に急増した。サバの漁獲量も14万3千トンと14年の6倍近くに拡大した。
公海では資源管理のルールがなく、取り締まりもできないため日本政府は中国や台湾、韓国、ロシアなどと新たな条約を締結。早期に資源調査を実施し、漁船の数を現状から増やさないよう努力することを決めた。
しかし、問題の海域では無登録で操業する中国漁船も多い。合意に実効性を持たせるため、政府は中国や台湾に厳格な管理を求めるべきだ。調査によって資源量の減少が判明すれば、漁船や漁獲量を削減する対策も要る。
14年には小笠原諸島の周辺で中国漁船が赤サンゴを大量に密漁する事件が起きた。北海道沖のEEZ内では水産庁がロシア漁船のものとみられるカニの漁具を多く押収している。日本の主権を侵害する行為は許されない。水産庁は海上保安庁と連携を強めて監視を徹底してもらいたい。
国連統計で1980年から14年までに世界の漁獲量(養殖を除く)は4割増加。中国の漁獲は5.5倍に増えた。水産資源を維持するには、新興国が漁獲ルールをきちんと守る必要がある。そのためには、まず日本が各国に資源管理の手本を示さなければならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO16271910S7A510C1EA1000/
マグロ漁獲量、上限規制超え 国際圧力増すおそれ
水産庁は27日、資源の減少が懸念される太平洋クロマグロの幼魚の漁獲量が、国際社会に約束した規制の上限を初めて上回ったと発表した。日本の資源管理の甘さが表面化したことで、環境保護を重視する国際社会の圧力が増すのは必至だ。
2016年7月から17年6月末まで日本に割り当てられた漁獲上限の4007トンに対し、27日時点の漁獲量は4008トンに達した。漁期は残り2カ月あり、さらに膨らむのは確実。超過分は翌年の漁獲枠(4007トン)から差し引かれる。
主因はふだんクロマグロと関わりがなかった沿岸の漁業者が急に釣り始めためだ。
「久しぶりにクロマグロの来遊が増えた」(長崎県の漁業者)ことで、国の承認を受けていない漁業者による漁獲が昨年末に九州で発覚。いまの規制は法律に基づかない自主的なルールになっており、現場への徹底には限界があった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS27H5O_X20C17A4EE8000/