中国「ネトゲ廃人村」元住民が語る“本物のクズ”の生活 ゲームと「女神」とギャンブルと - 安田 峰俊 (1/2)
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近年、中国ではスマホを使ったQRコード決済が市井の屋台や菜っ葉売り市場まで普及し、シェア自転車など新たなサービスも生まれている。
そうした新時代の中国的ITイノベーションの一大拠点となっているのが、広東省深セン市だ。
もっとも、いまをときめく深センは輝かしい繁栄の陰に広がる闇も深い。郊外の龍華新区にある景楽新村一帯(現地にある職業斡旋所の名を取って「三和」と呼ばれる)には、
デジタル工場で働く短期労働者や流れ者の若者が集まるサイバー・スラム街があり、わずかなカネをインターネットゲーム(ネトゲ)や
ギャンブル・性風俗などの刹那的な娯楽に費やして明日なき日々を送っている。
故郷の親族とのつながりが断絶し、劣悪な環境の安宿やネットカフェに泊まり続けて自堕落な生活を送る彼らは、
いつしか中国のネット上で「三和ゴッド」(三和大神)と呼ばれるようになった。私は彼らについて調べるうちに現場をどうしても見たくなり、ついに広東省での実地取材を敢行。
今月4日発売の『SAPIO』9月号に「中国『金持ち都市』を彷徨う若き廃人たち」と題して寄稿した。
(略)
現代のアヘン窟・三和
――あなたもやはりネトゲ三昧を? 呉用さんはどんなのをやっていたんですか。
呉用 『Legend of Mir』とかだ。まったくカネがないはずなんだが、気がつけば1万元(約16万円)ぐらい課金していた。人から借りたカネだった。ゲーム内の宝箱なんかで得たものも多少はあるけどな。あんたはゲームやらないのか?
『Legend of Mir』中国版の公式ページ。もとは韓国のゲームだが、2001年に『熱血伝奇』の名で中国に上陸してから、ほぼ「中国のゲーム」と呼んでよさそうなほど爆発的なヒットとなった。
――僕もゲームは好きですが、90万元の借金から逃げた先でネトゲに1万元を課金するほどでは……。
呉用 そうだろう。ネトゲは本当に怖いんだぞ。底なしだ。ハマったらもう人生は終了さ。ネトゲの運営企業というのは、ずいぶんと罪深い連中だと思うね。多くの若者に道を誤らせて、次の世代に害を及ぼしている。
――さながら現代のアヘンですね(注.三和がある広東省は往年のアヘン戦争の激戦地である)。で、呉用さんはどういうふうに遊んでいたんですか?
呉用 朝も昼も夜もなかった。十数時間連続でプレイとか普通だったな。6時間の滞在費が5元(約82円)のネカフェで、支払いの時に20元払ったこともあったから、つまり24時間ぶっ続けだったわけだ。
――「(日雇い仕事で)1日働けば、3日遊べる」が三和の合言葉ですからね。
呉用 ああ。2015年当時の話だが、日雇い仕事の稼ぎは1日100元(約1600円)ほどだ。一方でネカフェは1晩いても5元。安旅館は、俺が住んでいたころは1泊10元だった。長く住めば7〜8元に下がったな。
三和の安旅館の室内。1泊当たりの滞在費は格安とはいえ、泊まりたいかと言うと……(阿飛氏提供)。