https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20171103-00077730/
プチデモン州首相は「卑怯者」か
[ロンドン、バルセロナ発]欧州連合(EU)本部のあるブリュッセルに逃亡したスペイン北東部カタルーニャ自治州のプチデモン州首相に、 EU加盟国に適用される欧州逮捕状が発布される見通しとなりました。11月2日、マドリードにあるスペイン全国管区裁判所の召喚命令に応じなかったためです。
同裁判所は逃亡と証拠隠滅の恐れがあるとしてプチデモン州政権の閣僚8人を拘束しました。独立宣言に反対して閣僚を辞任した1人について検察官は5万ユーロで保釈を認める方針です。最高裁判所で行われるフルカデイ州議会議長ら議員6人の審理は1週間延期されました。
9割が独立に賛成した10月1日の「非合法」住民投票を受け、27日に州議会が独立宣言を承認したことに対し、スペイン中央政府は自治権を剥奪、州議会を解散し、プチデモン州首相やフルカデイ州議会議長ら計20人を国家反逆罪、扇動罪、公金不正使用罪で起訴するという強硬手段に打って出ました。
現行のスペイン憲法下では一部地域の独立は認められておらず、有罪になると最長で計51年も投獄されるという重罪です。11月2日夜、バルセロナの州議会周辺には2万人が集まり、拘束中の市民組織・カタルーニャ国民会議(ANC)リーダーら2人も合わせ全員の即時釈放を求めました。
プチデモン州首相は「非常に深刻な民主主義への攻撃」「12月の州議会選に対するクーデターだ」と非難しました。プチデモン州首相ら5人は口封じを怖れてフランス経由でブリュッセルに逃亡し、「EUの首都」から独裁者フランコ(1892〜1975年)の思想と人脈を受け継ぐ国民党とラホイ首相の横暴を訴える戦略です。
プチデモン州首相には「分離・独立主義者」「反逆者」「逃亡者」「臆病者」といろいろなレッテルが貼られていますが、独立運動を扇動しながら自分は助かりたいために分離・独立派の市民を見捨てて逃げ出した「卑怯者」なのでしょうか。
昨年7月以降、3回にわたってバルセロナでカタルーニャ独立問題を取材してきた筆者は、カタルーニャ州の自治権と富を次々と奪ってきたラホイ首相より、時間をかけて無抵抗・非暴力の民主的独立運動を進めてきた分離・独立派にどうしても共感を覚えてしまうのです。