残酷な「遺伝の真実」あなたの努力はなぜ報われないのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53474
個人の各能力に対して遺伝的要素または環境的要素が寄与する割合
行動遺伝学の知見には、世の中のタブーにふれるものが少なくない。
その最たるものが知能と学業成績に関する残酷な事実だ。
行動遺伝学が扱ってきた心理学的な特徴の中で、知能と学業成績は、最も遺伝の影響が大きい特徴のひとつである。
遺伝率(後述)は60〜70%ほど。身長や体重の遺伝率が90%くらいだから、
そこまでは高くないものの、パーソナリティや喫煙や飲酒などが50%程度と比べると明らかに高い。
遺伝が60%なら環境も40%はあるのだから、そこに救いがあるだろうと思いたくなるだろう。
確かに環境の影響もほぼ遺伝の影響に拮抗する。ふつう双生児のデータを分析すると、
あらかたの形質でこの環境の影響の由来は、一人ひとりがたまたま出くわす
偶然の環境に帰することができる場合が多く、それは家族内で共有されない。
それどころか一卵性双生児のきょうだいですら、一人ひとりに異なる個性的な環境であることが
大きいことが明らかにされている。しかしこの知能と学力に関しては、
家庭環境によるきょうだいの類似性も大きく、その割合は20〜30%程度になる。
これはたとえば遺伝的資質は同じでも、親が子どもに知的な刺激や勉強に集中できる環境を
与えているかどうかで、大きく変わることを意味する。
だから親にとってみれば、まだまだ子どもの知能や学力をなんとかする可能性の余地がある。
だがそれはあくまでも親しだいだ。
遺伝要因は子ども自身にはどうすることもできない。
その上、親も家庭環境も子どもが自由に選ぶことはできない。
子ども自身にどうしようもない要因で、学業成績の80〜90%が説明されてしまうのである。
にもかかわらず、学校でも塾でも親からも「できないのはおまえのせいだ。
努力不足だ、勉強の工夫が足りない、やる気がない。だから成績が伸びないのだ」と
成績の出来不出来の責任を子ども本人に押しつけている。こんな不条理があるだろうか。