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行方不明「はれのひ」社長 茨城県の実家に戻らず、「どこで何をしているか、わからない」
振袖のレンタルなどを手掛ける「はれのひ」(本部・横浜市中区)が成人式当日に突然、音信普通になった問題が波紋を広げている。
多くの新成人が振袖の着付けを受けられず、成人式への出席を断念する人も続出。
神奈川県警、警視庁、茨城県警などには現在、約500件の相談が寄せられ、被害総額は1億円以上、1人当たり30万円前後の被害が最も多いという。
被害総額は1億円を超えるという。
「はれのひ株式会社被害者の会」を立ち上げた「きものと宝飾社」(京都市)の担当者はこう語る。
「これまでに100件ほどの相談が寄せられています。来年や再来年の成人式の振袖を予約してしまった方が多い。
料金として20万〜80万円の料金を既に支払ってしまい、手元にはサービス品としてもらった小物しかないといいます」
“悲劇”を引き起こした篠崎洋一郎社長(55)は1月13日現在、行方をくらましたまま。いったい、どんな人物だったのか。
業績が傾いて給与の遅配などが生じていたといわれる2017年に、インターネット上の就職・転職サイトに投稿された
「はれのひ」社員からの口コミ情報では、篠崎氏のワンマンぶりを批判する次のような書き込みが複数見られた。
〈体制については、コロコロ変わる。社長の気分次第。昇給も降格も急。
転勤させられるスタッフもいる。それも社長の一声で全て決まる。それで上手くいっていた頃は良かった。
現在は経営状態が非常に悪く、社内雰囲気もよくない〉
また、〈経営者への提言〉と題して、篠崎氏に向けられたとみられるこんな投稿もあった。
〈遠く先のことしか見ておらず、目の前の社員を蔑ろにしてはいませんか?
社員は駒ではありません。今まで順調に長く勤められていた方も、このままでは疲れ切ってしまいます〉
全国に100店舗を開店し、上場を目指すなどと周囲に語っていた篠崎氏の「野望」と、厳しい現実との間にギャップが生じていたのだろうか。
「はれのひ」に髪飾りを納入していた埼玉県内の業者はこう語る。
「売上の入金が徐々に減り、17年5、6月にはゼロになった。『5月に税金を払って現金がなくなった』という説明でした。
女性専務が自腹で一部を払うなどしてくれたが、半年ほど前に商品をすべて引き上げた。
成人式の騒動を知って専務の携帯に電話したが、すでに解約されていた」
「野望」の原点は、どこにあったのだろうか。篠崎氏は茨城県日立市出身。
1982年に県立日立第一高校の定時制を卒業している。同級生が語る。
「細見のオカッパ頭で、どちらかというと穏やかでシャイな性格。ギター好きで、学校の行事ではフォークソングを弾き語っていた。
昼は楽器販売関連の仕事をしていたと記憶しています。実家は父親が一人で牛乳屋を営んでいて、生活は楽ではなかったでしょう。
悪いことをするようなタイプではなかったので、今回のニュースを見て驚いています」
篠崎氏の行方の手がかりがつかめないかと実家があったという日立市内の住所を訪ねたが、すでに更地の駐車場になっていた。近所の住人が言う。
「父親が一人で自転車で牛乳配達をしていましたが、体の調子が悪くなったようで20年くらい前に廃業して、奥さんとともに引っ越していきました。
かなり築年数の経った木造の平屋の借家で、生活は楽ではなかったと思います。
息子さんがいたかは記憶にありませんね」
一家を知る人物によると、洋一郎氏には妹がいたが、洋一郎氏は卒業後、ほとんど家に寄りつかず、
父親は「息子からは連絡もなく、どこで何をしているかさっぱりわからない。困ったものだ」と嘆いていたという。
牛乳店を閉めた後、両親は水戸市内の娘の家に身を寄せていたというが、
数年前からは夫婦で日立市内の団地に引っ越していた。団地の同じ棟の住人がこう語る。
「越して来たのは3年くらい前かな。夫婦で質素に暮らしていましたよ。
娘がいるとは言っていたが、息子さんのことは聞いたことがなかった。
お父さんは1〜2年ほど前に病気になり、9カ月くらい入院した後、亡くなったそうです。
奥さんはその後、引っ越してしまい、今どこに住んでいるかは知りません」
結局、生まれ故郷の町では、現在の篠崎氏の痕跡をつかむことはできなかった。
多くの被害者を生み出してしまった今、どこで何をしているのだろうか。(本誌 小泉耕平)