米バージニア州ハンプトンに住むエイダン・キャリーさん(19)は高校3年生だった昨年、名門のダートマス大学、バンダービルト大学、そしてバージニア大学に出願した。
だがその後、サンフランシスコにある創立わずか1年の教育機関「ミッションU」のウェブサイトを見つけ、すぐさま自分の第1志望に決めた。
キャリーさんは今、同校でデータサイエンスを学ぶ1年間のプログラムを受けている。1週間の勉強時間は40〜50時間ほどで、
教育の一環としてサンフランシスコのベイエリアにあるハイテク企業を訪問することもある。卒業後は3年にわたり収入の数パーセントを学校に支払い続ける取り決めだ。
米国では今、ミッションUのような新しい教育機関が人気を集めている。同校は50人の枠に対し、1万人以上から応募があったとする。
キャリーさんは「大学の学費を見て自分には厳しいと感じる人がいると思う」と話し、「そうした人たちはこの種のプログラムを待っていたので、登場するとすぐにその提案の価値を理解したのだろう」と続ける。
昨年9月に一期生を迎え入れたミッションUのような学校は、デジタル時代に大学に取って代わることができる新種の教育機関として名乗りをあげている。
こうした学校によれば、応募者の合格率はアイビーリーグが発表している合格率と同じ1桁台で推移。
ここならば学生ローンの負担はなく、注目される分野でスキルを習得し、ハイテク企業で訓練を受けることも保証される。
これらを合わせて提供することで、学生は多くの収入を得られるIT(情報技術)系企業に就職する道筋を立てることが可能になる。
ミッションUなどからは、これまで専門職に就くのに必要な切符だった正式な大学の学位は得られないものの、
一般的な大学で古くから取り入れられているリベラルアーツ(教養)系の科目を履修する必要もない。
ただ、バージニア・コモンウェルス大学で英語を教えるガードナー・キャンベル教授は、こうした新しい教育機関では働き方は学べるものの、なぜ働くのかを学生に教えていないと指摘する。
そこが身につかなければ、プログラムの卒業生は収入が多いだけの操り人形になるリスクがあると同氏は話す。
「学位は死んだ」
学生ローンの負担が増え、学位がもたらす価値に疑問の声が聞かれるようになった今、多くの政治家なども専門学校のように大学の代わりになる教育機関の魅力を発信している。
一方で従来の4年制の大学では、入学者数の差などによって勝ち組と負け組が鮮明になってきている。
大学に代わる教育機関のはしりは、2011年に登場し始めたプログラミング訓練校だ。こうした学校はソフトウエア工学の授業を提供し、学生は大学卒業生か大学中退者が大半を占める。
業界動向を調査するニューヨークのコース・リポートの共同設立者、リズ・エグルストン氏によれば、2017年には少なくとも95のプログラミング訓練校が数十の都市に展開し、2万2949人が卒業した。
訓練校の学費は平均で1万1000ドル(約117万8000円)。プログラムは14週間で終わる。学生らは卒業後、平均して年7万1000ドルの初任給を受け取る仕事についているという。
新たに登場したミッションUなどは、もっと長期間にわたるプログラムを提供する。米カリフォルニア州では最近、ホルバートン・スクールと「42」と呼ばれるプログラムがオープン。
インディアナ州インディアナポリスではケンジー・アカデミーが2つめのクラスを開講したところだ。こうした教育機関はデジタルなスキルの習得に集中しているものの、
それ以外にも問題解決能力やチームワークに関わる一般的な教育課程も少しずつ取り入れ、大学の代わりになる教育機関としてアピールをしている。
米サウスカロライナ州にある創立5年目のデジタルスクール、プラクシスは、「学位は死んだ。必要なのは経験だ」とウェブサイト上に掲げる。
同校では学生向けにデジタル技術だけでなく、コミュニケーションなどソフト面のスキルも教えている。
半年間の授業を受けた後、学生らは主にテクノロジー系のスタートアップで見習いとして働く場を提供される。
プログラムの料金は1万1000ドルで、この見習い期間に得られる収入で賄えるように設定されている。
プラクシスに出願する人の合格率はわずか11%で、これまでに卒業した学生数は約200人だと同社を創立したアイザック・モアハウス氏は話す。
ほぼすべての学生は卒業後に就職先を見つけたといい、「われわれは雇用主にとってふるいの役割を果たしている」と同氏は続ける。
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