朝鮮学校の生徒が修学旅行で北朝鮮から持ち帰った土産を、日本の税関が没収したことが波紋を広げている。
朝鮮学校を傘下に置く朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)や、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞が猛批判しているが、
税関の対応は「不当な押収」にあたるのか。自民党政調会長代理の片山さつき参院議員は、税関の正当性を主張している。
発端は、6月28日にさかのぼる。「祖国訪問」を終え、関西空港に到着した神戸朝鮮高級学校の生徒62人は、税関の荷物検査を受けた。その際、北朝鮮の国旗や文字が入ったクッションや化粧品、薬などが没収の対象となった。
総連は翌29日、記者会見を開き、北朝鮮との対話ムードが広がる現状を念頭に、「非人間的な措置」「唯一、日本政府だけが敵対行為に固執している」と批判した。
韓国・中央日報(4日、日本語版)などによると、総連や韓国の市民団体は3日、なぜかソウルの日本大使館前で「人権蹂躙(じゅうりん)を謝罪し、押収した物品を返還せよ」と訴えた。
前出の労働新聞は5日、「人道主義と国際法を乱暴に蹂躙した許せない野蛮行為、反人倫的悪行である」と非難する論評を掲載した。
果たして、税関の行為は「非人間的な暴挙」なのか。
片山氏は「日本は、法と正義のもとに北朝鮮に経済制裁を科している。土産品も、生徒への嫌がらせではなく、経済制裁で持ち込みが禁止された輸入品ゆえに、法令に基づき押収した」と反論した。
もともと、北朝鮮への経済制裁は、国際社会のルールを破った核実験などに対する報復措置であり、「核・ミサイル開発」の資金源を絶つのが目的だ。そのため、私的に使うことが明らかな衣類などは没収されない。
片山氏は、北朝鮮の核脅威について「『完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)』のプロセスは、明らかになっていない。日本に対する脅威は、いささかも減じていない」と主張する。
北朝鮮をめぐっては、6月の米朝首脳会談後も、核兵器用の濃縮ウラン増産など、「非核化」に逆行する動向が報じられ、ドナルド・トランプ米政権も、北朝鮮を「核の脅威」と位置付ける認識を示している。
日本は、北朝鮮側の恫喝(どうかつ)に動じることなく、完全非核化の達成までは、経済制裁を維持し、毅然と対応すべきだ。(ジャーナリスト・安積明子)
https://news.infoseek.co.jp/article/00fujisoc1807110004/?ptadid=