コラム:2019年の世界市場、最大の「隠れた脅威」は日本
Swaha Pattanaik
[ロンドン 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 2019年の世界金融市場にとって最大の脅威は何だろうか──。米国の金利引き上げでも、欧州中央銀行(ECB)の債券買い入れ終了でもない。それは、日本銀行である。
日銀の黒田東彦総裁が、現在の超金融緩和策にほんの少し調整を加えただけで、世界の資産価格に混乱を招く可能性がある。
他の広く予想されている変化よりも大きな威力を発揮しかねない。
日銀はすでに、日本全体の国内総生産(GDP)を超える規模の資産を保有している。それでも黒田日銀は、他の主要中銀がバランスシート拡大にブレーキをかける中、拡大を続ける構えだ。
変化を暗示するいかなる兆候も投資家の警戒を呼ぶだろう。彼らのリスクと報酬に対する評価はずっと、各国中銀による流動性の注入によってゆがめられてきた。
日銀が出口戦略を議論しているとの報道を受け、債券と為替のボラティリティーが高まった。
黒田総裁はある意味、非難されても仕方がない。インフレ目標2%にまだ届かない一方、日銀の金融政策は地方銀行の問題を悪化させている。
資金調達コストと顧客向け融資による収益の差が縮小する中、約半数の地銀は、過去2年あるいはそれ以上の期間において融資事業が赤字となっている。
金融政策が有害無益と化す恐れがある場合、日銀は、10年債利回りがゼロ%近辺のより広いレンジで動いたり、
短期金利をマイナス0.1%よりも上昇させたりすることを許容する用意があるとのシグナルを発する誘惑に駆られるかもしれない。
そうなれば、日本国債の利回りは急騰するだろう。日本国債の半分近くを日銀が保有しており、取引は非流動的になり得る。
他の市場もその「寒気」を感じるだろう。国内の投資家はより良いリターンを求めて外貨建て債券に目を向けており、円建ての利回りが十分上昇したときに戻ってくるだろう。
日本の投資家はこの9月だけで、約4.7兆円相当の外貨建て債券を購入している。
米国のほか、フランスとスペインの国債が市場規模の割に人気となっているが、それ故、非常に大きな打撃を被る可能性がある。
為替のヘッジコストが上昇しており、日本の投資家は高いヘッジコストを支払う代わりに海外資産から退散するかもしれない。
そうした「保険」をかけなかった投資家の逃げ足はいっそう速いだろう。
2019年も利上げを続ける可能性が高い米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、おそらく実力行使に訴えるだろう。だが、パウエル氏の行動はすでに広く織り込み済みだ。
したがって、来年に市場の神経を逆なでする最大の脅威となり得るのは日銀の黒田総裁なのである。
https://jp.reuters.com/article/column-2019-global-market-risk-idJPKCN1OP0DQ