全世界で30か国語に翻訳され、累計は6500万部を突破するという、驚異のベストセラー小説「ライ麦畑でつかまえて」。
日本でも半世紀以上にわたり愛され続け、03年に発売された村上春樹による新訳版(「キャッチャー・イン・ザ・ライ」)で初めて手に取ったという人も多いだろう。
そんな世紀の名作を生み出したのが、孤高の天才作家と言われるJ.D.サリンジャーだ。生誕100周年を迎えた(1919年1月1日生まれ)今年、ベールに包まれていた彼の素顔に迫る映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』が、1月18日(金)より公開される。
サリンジャーの名作は、いかにして生まれ、どんな影響をもたらしているのだろうか?
■ まず「ライ麦畑でつかまえて」とは、どんな作品なのか?
高校を成績不良で退学処分となった17歳の少年ホールデン・コールフィールドがニューヨークに帰るまでの3日間を描いた、作家サリンジャー唯一の長編小説。
物語は、主人公のホールデンが西部の街の病院で療養中に、去年のクリスマスの出来事を語るという形式で進んでいく。
スラング交じりの粗野な口語文体が若者の熱烈な支持を得る一方で、保守層からは反道徳的だと批判を浴び、当時は多くの学校や図書館で“禁書”として扱われた。
■ 若者からの圧倒的な支持と、次世代にまで続く様々な影響
社会や大人の欺瞞に対し鬱屈を投げかける内容は時代を超えて若者の共感を呼び、1951年の発表以来、青春小説の名作として現在まで世界中で読み継がれている。その影響力は計り知れず、のちの時代でも作品がたびたび取り上げられるほど。
1980年のジョン・レノン射殺事件で、暗殺者マーク・チャップマンは警察が到着するまでの間、犯行現場で本書を読んでいた。さらに法廷でも作中の一節を大声で読みあげるなど、その心酔ぶりを露呈。
また、81年のレーガン大統領殺害未遂事件、1989年の人気女優レベッカ・シェイファー殺害事件、いずれの犯人も「ライ麦」を愛読していたという皮肉な共通点を持っている。
サリンジャーが後年の文芸、映像作品などに与えた影響も大きい。神山健治が手がけたTVアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の中には、「ライ麦」の引用が数多く登場。
吉田秋生による漫画のタイトル「BANANA FISH」は、サリンジャーの短編「バナナフィッシュにうってつけの日」からつけられている。
12年の映画化でも話題となった99年のスティーブン・チョボスキーの小説「ウォールフラワー」は、高校生の主人公が読者に語りかけるような文体が「ライ麦」と類似し、“現代版キャッチャー・イン・ザ・ライ”とも評された。
■ 「ライ麦」発表前後、作者サリンジャーになにがあった?
映画は、そんなサリンジャーの作家としての出発から表舞台を去るまでを描いている。
マンハッタン社交界での情熱的な恋愛、才能を引き出してくれた編集者との運命の出会い、
仲間の多くが犠牲になった地獄のような戦争体験…彼は、戦争のトラウマや周囲の人々の無理解に傷つき苦しみながらも、自身の分身とも言えるホールデン・コールフィールドの物語を書き続けた。
社会現象にもなった「ライ麦畑でつかまえて」の成功により、富も名声も手に入れたはずだったサリンジャー。しかし、32歳で突如として文壇の第一線に押し上げられて以降は沈黙を貫き、40代半ばから91歳で亡くなるまでの間に、新作が発表されることはなかった。
以下略
ソース元
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190101-00174617-mvwalk-movi
おしまい。