遠隔操作事件」の顛末
当時30歳のIT関連会社社員が行ったこと
PC遠隔操作事件とは、2012年6月から9月にかけて14件もの殺害・爆破予告がなされた事件である。
JAL便の爆破予告から、小学校の襲撃予告
はたまた有名子役や人気タレントグループ襲撃予告までとターゲットは幅広く、世間を震撼させた。
逮捕されたのは、IT関連会社社員で当時30歳の片山祐輔という一人の青年であった。
片山が最初に罪を犯したのは、横浜CSRF事件と呼ばれる一件である。
CSRFを使って第三者のパソコンを踏み台にし、横浜市のホームページの投稿コーナーへ書き込みを行う。
そこには横浜市内の小学校を襲撃し、児童を大量に殺害するという予告文が書かれていた。
本来それほど高度なセキュリティ知識がなくても実行できるこの犯罪において、
警察が誤認逮捕という失態を犯してしまったことが運命の変わり始めである。
予想を遥かに超えた成功を収めたことで、
片山は遠隔操作を使った殺害予告がもたらす高揚感に味をしめてしまい、次の事件を誘発してしまう。
一方で、警察がこの段階で遠隔操作に気付いていれば、事件は人知れず収束していた可能性も否めない。
片山は他人のパソコンを遠隔操作して次々に新たな殺害予告の書き込みを行い、警察もさらなる誤認逮捕を引き起こしてしまう。
まさに警察自身の手によって、この事件はただの愉快犯では済まされない
深刻かつ重大な事件に変わってしまったのだ
それにしても気になるのは、一体なぜ片山がこのような事件を引き起こしたのかという動機の部分である。
驚くべきことに、この動機の中に片山逮捕までの道筋は内包されていた。
人付き合いが下手で、仕事上でもスランプに陥っていた片山が
リアル社会での不全感をネットを通じて世間を騒がせることの万能感で埋め合わせをしていたことは想像に難くない。
しかし自分の方が一枚上手だとに思っているだけでは満足できず、それをみんなに知ってもらう必要もあった。
この捻れた欲望こそが、片山の犯罪における特殊性である。
片山には捕まりたくないという気持ちと同時に、
自分の存在や犯人が実は自分であることを知ってほしいという相矛盾する2つの気持ちが共存していた可能性が高かったという。
つまり自己顕示欲があったからこそ事件は起こり、
自己顕示欲があったから捕まってしまったというわけだ。これを皮肉と言わずして、何と言うべきか。
https://toyokeizai.net/articles/-/178479