「君にはわからないかもしれないけど」精一杯の告白に、片思いしてる男友達が返した言葉 | 文春オンライン
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ハセと僕は、仲良くなってから、毎日のように一緒に遊んでいた。それなのにハセは、マミちゃんと付き合い始めてからというもの、僕と遊ぶヒマはないようだった。誘いを何度も断られていたが、それでも僕はめげずにハセを誘い続けた。
「今日、みんなでカラオケに行くんだけど一緒に行かない?」
「マミと約束してるから行けない。みんなで楽しんで!」
ハセがいない時間は僕にとって空虚なものだった。
どんなに友だちがたくさんいても、その友達とどんなに楽しい事をしていても、僕の心に開いた穴は埋められなかった。
ハセなしでは「楽しさ」や「幸せ」の感じ方を忘れた人間になってしまったようで、一人になると勝手に涙がこぼれてくる。そんな日々が続いていた。
ある日の夜、僕は思いあまって、ハセに電話をかけた。
「もしもし。ハセ、今一人?」
「うん、一人。どうした?」
「最近さ、ハセは僕とあんまり遊んでくれないじゃん。だからなんか、寂しいんだよね」
勇気を出して、精一杯の告白だった。
「七崎、お前も彼女を作れば? 好きな人とか、ホントにいないの?」
「彼女なんかいらない。好きな人なんかいない! 僕はハセと遊びたいだけなのにハセが彼女ばっかりで、本当にムカつくんだよね!」
「お前、寂しいだけだろ。絶対彼女作った方がいいって! そしたら俺の気持ちもわかるよ。彼女がいれば、友だちと遊ぶ時間ももったいないと思うくらい、彼女に会いたくて仕方ないんだよ。お前にその気持ち、わからないだろう」
「じゃあ、僕と遊ぶ時間ももったいないの? 彼女といたいから?」
「みんなそうだと思うよ。彼女ができたら、みんなそんな気持ちになるんだよ。人を愛したことのない、七崎にはわからないかもしれないけど」
僕は泣き出してしまった。自分の中で、何かの糸が、ぷつりと切れた感じかした。僕は一気にまくしたてた。
「あんなクソ女に振り回されるハセの気持ちなんてわかりたくない! マミちゃんなんか、ほんとに大嫌い! マミちゃんなんかを好きなハセも大っ嫌い! だから、マミちゃんとハセが別れないなら、僕はハセの友達をやめる!」
理性が遠くなっていくのを感じた。
「友達をやめるって……七崎、どうしたんだよ! おかしいって! 他の友達にそんなこと言う奴いねえぞ? 俺に彼女ができて、お前以外の友達はみんな喜んでくれたのに、なんでお前は喜んでくれねぇんだよ!
七崎……、一回病院行って診てもらった方がいいんじゃないか? 最近のお前、なんか変だぞ!」
変。そうだ、僕は何かおかしい。そう自分でもわかっている。
「病院に行った方がいいのは、ハセの方だ! 彼女依存症! マミちゃんばっかりで……あんなクソ女! ハセも同類だ! 二人とも死ねばいいと思う! それかいっその事、僕が死ねばいいんだ!」
僕はもはや、泣き叫んでいるのに近かった。
「落ち着けって! じゃあ、俺も病院行って、彼女依存症か診てもらうから、そしたら七崎も行くか? 一緒に診てもらおう、な? 俺は七崎が心配だよ。だって、言ってることめちゃくちゃだよ! 自分で分かってる?」
ハセはこんなときでも優しかった。ハセの言う事は正しいと思った。ハセに彼女ができてから、自分はおかしい。幸せを感じないうえに、いつも泣いている。