【特集】1日5時間給水で市民生活に影響も…平成の「渇水」を振り返る 香川
ほぼ毎年のように水不足に悩まされる香川県。特に1994年、平成6年には早明浦ダムの水が底をつき、高松市では1日に5時間しか水が出ない日が1カ月続くなど
市民生活に大きな影響が出ました。平成の渇水を振り返るとともに、この間に変わったこと、変わらないもの。国や県の対策を検証します。
平成6年の大渇水 早明浦ダム貯水率が初めてゼロに
空梅雨と猛暑に見舞われた平成6年。四国の水がめ、高知県の早明浦ダムの水は減り続け、完成以来初めて貯水率がゼロになりました。
香川用水に依存する5市14町で断水が行われ、中でも高松市では午後4時から9時までの1日5時間給水が1カ月間も続きました。
ポリタンクを買い求める行列。小学校では給食場が使えず牛乳だけの給食。家庭では、バケツにためた水をポンプでくみだして洗い物をする工夫も…
夏場には8トンから10トンの水を使っていた、さぬきうどん店でも…
(松下製麺所/松下守さん)
「あす使う水の量を、夕方5時から9時までの給水のときにため、それで朝、それを沸かし、うどんを洗うのに使い。いろいろ苦労はありました。暑いときにね」
平成6年以降もたびたび水不足に
(山下洋平リポート)
「平成元年から31年までに取水制限に入った年は21年。ダムの水位が下がり、岩肌がむき出しになったこのような光景も、もはや見慣れたものになりました」
平成6年以降も、たびたび陥った水不足。平成17年(2005年)にも早明浦ダムの貯水率が再びゼロとなりました。早明浦ダムで水力発電をしている電源開発が権利を持つ「発電用水」が緊急的に水道用水に使われました。
(中略)
有識者らが提言するも“動かない”問題
深刻な渇水に見舞われるたびに浮上するのが、徳島県が権利を持つ「不特定用水」の問題です。「不特定用水」とはダムの建設前から徳島県内で使われてきた水と河川の環境を維持するための水のことです。
平成17年の渇水時、香川用水への供給量は最大75%カットされましたが、全体の3分の2にあたる毎秒43立方メートル分の「不特定用水」はカットされないままでした。
カットされない徳島県の「不特定用水」
実はこのとき、水利用連絡協議会の会長が徳島県知事を訪ね、不特定用水の30%カットを要請していましたが、受け入れられなかったのです。
(徳島県/飯泉嘉門 知事)
「今の早明浦が仮になかったとしたらどうなるんだろうかと。当然、うちとしては不特定(用水)だけでやる。
香川県さんは農業用水であれば、あの多くの満濃池含む、ため池で対応してる。歴史の重みというのも、どうしてもあるもんですからね」
平成6年の渇水時にも、当時の平井知事が徳島県に同様の要請を行っていました。
しかし、徳島県には「長年、吉野川の洪水被害に苦しんできたのは自分たちだ」という思いもあり、この不特定用水はいわば「聖域」となっているんです。
(四国地方整備局 河川管理課/渡辺健二 課長)
「あくまでも既得の権利と言いますか。徳島県さんの元々の権利の上に、分水が成り立っていると。
権利を犯すということは、かなり難しいと思いますので、そこにいくまでに、できるだけ調整しながら延命していくということが重要ではないかと思ってます」
専門家からは厳しい指摘も
これに対し、四国水問題研究会の会長として提言を取りまとめた、香川大学の井原健雄名誉教授は…
(香川大学/井原健雄 名誉教授)
「個別の動き(対策)としては、あっても微々たるものです。四国の水問題を考えるというもう少し大きな問題意識に対して的確な対応とか動きというものが出てきてるかっていうと、僕は歯がゆい思いですね」
平成も残りわずかとなった25日、4月としては史上初めて取水制限が始まりました。「異常気象」が相次ぐ近年、これまでの常識は通用しなくなりつつあります。
(香川大学/井原健雄 名誉教授)
「これまでの既得権とか過去のしがらみと言いますか、それを守旧派的な発想で守り抜こうとする、これはだめだと僕は思います。
いつまでもそれが許される状況ではないと思いますよ。例えば吉野川水系にある水は四国人、四国に住む人の共通の財産だから、
それをいかに配分していくのか、そのために立場の交換をしながら胸襟を開いて議論するということが絶対必要なことだと思います」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190430-00010002-ksbv-l37