東電、被災者に“5500万円返せ”
突然、賠償打ち切ったうえ…
福島市の夫妻 窮地に
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-08-23/2019082315_01_0.html
東京電力福島第1原発事故に伴う損害賠償を東電が出し渋る事例が続いています。福島市で農業資材と園芸用品を販売する高橋芳明さん(56)、真奈美さん(56)夫妻の場合は―。
高橋さん夫妻は今年5月、東電職員から手渡された文書を見て目を疑いました。
「2018年10月分以降の賠償金は払えない」「(支払い済みの)15年8月から18年9月分までの賠償金について見直しが必要で清算金が発生する」という内容でした。
清算金として支払いを求められた金額は約5500万円。
東電の説明は、▽15年6月発表で営業損害賠償の取り扱いを変更した▽高橋さんの場合は農業者扱いとして18年9月分まで賠償を続けてきたが、
15年8月分から商工業扱いとすべきものだった―というものです。
芳明さんは支払いを求めた文書を東電職員に突き返しました。
福島県は果物産地として有名です。高橋さんの店は、周辺に果樹園が多いことから「フルーツライン」と呼ばれる県道5号沿いにあります。
肥料、資材、道具、花や野菜の種と苗、農家が必要なものがそろいます。ビニールハウスも9棟あり、苗を育てています。
休日には親子連れでにぎわった地域でした。原発事故で一転。事故があった11年は売り上げ約3割減。12、13年は約4割減になりました。
賠償は11年3月分から出ましたが、過去にも1回打ち切られ、今回が2回目。
「東電は被害に見合う賠償をすべきなのに、自分たちで勝手に線引きをして、突然賠償打ち切り、支払いがすんだ分まで返還しろなんて…」と芳明さんは憤ります。
高橋さん夫妻は8月1日、福島県農民連とともに政府交渉を行い、賠償継続を求めました。真奈美さんはその時のことを「私たちは死活問題なのに、
政府担当者は話を聞くだけで“対岸の火事”という態度。すごい距離感を感じました」と話します。東電は今月中に回答をまとめる方向です。
「何度も何度も、店をたたもうかと考えた」という高橋さん夫妻。従業員のこと、店をあてにしているお客さんのことを考え、貯金を取り崩して店を続けています。
決算を10月に設定しているので、当面それまでは続けるといいます。賠償打ち切りが撤回されるのか、不安な日々が続きます。