総務次官の情報漏洩の背景に…“郵政再国有化”と“大物の天下り” 官僚主導で先行きも不透明に
高市早苗総務相は20日、総務省の鈴木茂樹事務次官が、かんぽ生命保険の不適切販売をめぐる
日本郵政グループへの行政処分案に関する情報を、次官OBで日本郵政の鈴木康雄副社長に漏洩(ろうえい)したとして、
停職3カ月の懲戒処分にしたと発表した。鈴木次官は同日辞表を提出、事実上の更迭だった。
役人の序列は入省年次で決まる。退職後はそれに役所の最終ポストの「格」が加味される。
こうした単純な序列があるのは退職後の天下りも現役の人事の延長として行われるためだ。
2人はいずれも旧郵政省出身で、序列からいえば、鈴木前事務次官は鈴木副社長に頭が上がらなかったと考えられる。
そもそも鈴木副社長は大物次官として有名だった。
要するに、天下りの先輩次官がいるから現役次官が情報を漏らしたという単純な話だ。
そうした天下りが行われた理由は、小泉純一郎政権で行われた郵政民営化が、民主党政権時代に揺り戻され、再国有化されたからだ。
それは、郵政グループの中心である日本郵政の社長人事をみていればよく分かる。
民営化の状態では大物官僚の天下りは難しくなるが、再国有化されたので大物官僚の天下りが容易になっていたのだ。
日本郵政は、2007年10月にスタートしている。その社長はこれまで5人おり、
(1)三井住友フィナンシャルグループ出身の西川善文氏(07年10月〜)(2)財務省出身の斎藤次郎氏(09年10月〜)
(3)同省出身の坂篤郎氏(12年12月〜)(4)東芝出身の西室泰三氏(13年6月〜)
(5)日本興業銀行(現みずほ銀行)出身の長門正貢氏(16年4月〜)だ。
(1)の西川氏が就任したのは郵政民営化時代であるが、(2)の斉藤氏と(3)の坂氏は民主党による再国有化時代だ。
(4)の西室氏と(5)の長門氏は自公政権だ。今回問題になった日本郵政の鈴木副社長は(4)及び(5)の時期だ。
ざっとみると、民営化時代は民間経営者、再国有化の民主党政権時代は財務官僚の経営、
自公時代は、形式的には民間経営者であるが実権は旧郵政官僚というのが実情だ。
郵政のような巨大組織を運営するのは20人程度の腹心が必要なのに、西室氏と長門氏はそうした状況でなかったようだ。
大臣が単身で役所に入っても、周りを官僚で固められて自由に行動できないのと同じように、日本郵政の人事権は事実上、
副社長の鈴木氏が握ってきたことになる。そのような一面が、かんぽ生命の不適切販売を報じたNHK番組に対する強気の抗議としても現れたのではないか。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/191227/dom1912270002-n2.html