<論戦ファクトチェック>首相「金融所得課税2倍で富再分配」 判断 実は民主党政権
2020年1月26日 朝刊
安倍晋三首相は、今国会で最初の論戦となった二十二日の衆院代表質問で、上場株式などの譲渡益や配当にかかる金融所得課税について「二〇一四年から税率を10%から20%に倍増している」として、増税で富の再分配が進んだと強調した。
実際は、10%に軽減していた税率を本則の20%にしたにすぎない。うそではないが、実績を誇張した表現と言えそうだ。
譲渡益などの税率は〇三年に20%と定められた。
当初から10%の軽減税率が期限付きで導入され、複数回の期限延長を経て一四年から本則通りに20%となった。
本則適用を閣議決定したのは民主党政権当時の一〇年十二月。
実施したのは確かに第二次安倍政権だが、首相は民主党政権の判断を引き継いだことになる。
首相は代表質問で、20%への「倍増」のほか、給与などの最高税率を引き上げたことも示し「この改革で所得再分配機能の回復に一定の効果があった」と胸を張った。
質問した立憲民主党の枝野幸男代表は、富裕層に有利な現行の金融所得税制そのものの改革を訴えたが、首相は「経済社会の情勢変化等も踏まえて検討する必要がある」と答弁するにとどめた。
慶応大の土居丈朗教授(財政学)は「金融業界や与党議員の多くは、株式市場に悪影響があるとして金融所得の増税に反対している。
一方で、首相は格差是正に不熱心とも思われたくないので、20%に上げて格差是正に配慮した、とアピールしたかったのだろう」と分析した。 (妹尾聡太)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202001/CK2020012602000131.html