始皇帝亡き後の秦王朝では、二世皇帝の後見人の立場にあった宦官である趙高(ちょうこう)が宮中において絶大なる権力を振るうようになり、自らの意見に逆らう者をことごとく処刑して排除していくという恐怖政治を敷いていくことになるのですが、
ある時、趙高は自らの権力の大きさを廷臣たちに見せつけようとして、試みに二世皇帝の前に一匹の鹿を連れてきて献上して、
「これは馬でございます」
と言い放つことになります。
二世皇帝は、これは何の冗談かと笑って、周りの臣下の者たちに、
「これは鹿ではないのか?」
と尋ねることになるのですが、
これに対して、
多くの人々は、趙高の権勢の大きさを恐れて、彼の意見に黙って従っていれば問題ないと考え、
「いえ、馬に相違ありません」
と答えて、その鹿は馬とされたまま皇帝へと献上されてしまうことになるのです。
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