https://www.tokyo-np.co.jp/article/35856
LGBTの雇用差別は違法 米最高裁が画期的判断
米連邦最高裁は十五日、心と体の性が一致しないトランスジェンダーや同性愛者に対する雇用差別は、公民権法の禁止対象になるとの初判断を示した。性的少数者の権利保護を明文化する法整備が遅れている中、性差別の枠組みで違法性を認定した。人権団体からは「画期的」と称賛の声が上がり、トランプ大統領は「決定を受け入れる」と語った。
トランスジェンダーや同性愛を理由に解雇された元地方公務員や葬儀会社の元従業員ら三人がそれぞれ提訴。人種や信教などによる雇用差別を禁じた公民権法第七編の「性差別」を巡り、性的指向や性自認も対象になるかどうかが争われた。トランプ政権は、現行法の規定が変更されない限り「対象ではない」と否定的な立場を示していた。
最高裁決定は判事九人のうち保守派とされる二人を含む六人の多数意見。決定理由で「雇用主が同性愛やトランスジェンダーを理由に解雇する場合、他の性別なら問わない特性や行動を理由に解雇することになる。性別が必要かつ明白な原因で、まさに公民権法が禁止している」と説明した。
一方、トランプ氏の指名で就任したカバノー判事は反対意見で、性差別と性的指向の差別は異なると指摘。公民権法には現時点で性的指向に関する規定がないことから、多数意見について「議会の役割を奪うものだ」と指摘し、立法権の侵害を主張した。
AP通信によると、全米五十州のうち保守色の強い南部を中心に二十八州では性的少数者の雇用差別を禁じる明文規定がない。連邦レベルでは、野党民主党が多数派を占める下院が二〇一九年、職場だけでなく教育や住居など包括的な分野で性的少数者差別を禁じる「平等法案」を可決したが、共和党優位の上院を通過する見通しは立っていない。