昨年7月の参院選をめぐり河井克行前法相(衆院広島3区、自民党離党)と妻の案里参院議員(広島選挙区、同)が公職選挙法違反(買収)の罪で起訴された。
安倍晋三首相が前法相を重用してきた経緯があり、首相に近い党幹部は「ダメージだ」と深刻に受け止めている。夫妻の辞職や失職で補欠選挙となれば、逆風の選挙戦を強いられるのは必至。
党本部が夫妻側に振り込んだ計1億5000万円の資金も焦点で、野党の追及にさらされそうだ。<下へ続く>
自民党幹部は8日、夫妻起訴について「イメージは良くない」と嘆き、「ああいう人を(政権中枢に)近づけたのは失敗だった」と厳しく批判。
公明党の斉藤鉄夫幹事長は記者団に対し「政権運営への打撃は非常に大きなものがある」と述べ、「政治不信を招いた責任は重大だ。議員辞職に値する」と断じた。
自民党には資金提供に関し「しっかり国民に説明責任を果たしていただきたい」と求めた。
前法相は首相補佐官や党総裁外交特別補佐を歴任し、首相の「右腕」として活動。菅義偉官房長官を囲む議員グループ「向日葵(ひまわり)会」も主宰し、政権中枢との近さを誇示してきた。
案里容疑者も参院選で菅氏らの全面支援を受け、党を離れた今も二階派特別会員にとどまる。
起訴によって政権への風当たりはさらに強まりそうだ。
自民党が神経をとがらせるのは、夫妻の公判が起訴から100日以内の判決を目指す「百日裁判」となる見通しであるためだ。
本人は議員辞職を否定しているが、有罪が確定すれば失職し、補選となる。
広島県政界は事件に関わった首長や地方議員の「辞職ドミノ」で混乱に陥っており、補選の時期によっては首相の衆院解散・総選挙の判断に影響を及ぼす可能性もある。
巨額の党資金が買収原資となったかが裁判でどう争われるかにも注目が集まる。
資金には税金を基にした政党交付金が含まれていたとの指摘があり、買収に用いられたと認定されれば政権への信頼が失墜するためだ。
自民党は「買収には使えない」(幹部)と主張するものの、使途を含め説得力のある説明はできていない。
夫妻への過度の優遇は党内からも批判を招いており、政権を揺さぶりかねない火種としてくすぶっている。
衆院予算委員会の与野党筆頭理事は8日に協議。
野党は、首相に説明を求めるため「政治とカネ」をテーマに集中審議の開催を改めて要求したが、自民党は拒否する姿勢を崩さなかった。
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