https://jp.reuters.com/article/goushi-kataoka-boj-naha-idJPKBN25U0ZL
[那覇市/東京 3日 ロイター] - 日銀の片岡剛士審議委員は3日、沖縄県金融経済懇談会後に記者会見し、安倍晋三政権から新政権に代わっても、コロナ禍で厳しい状況に置かれた日本経済の回復のために財政政策と金融政策の両輪で総需要を刺激し、打撃を受けた民間部門への流動性供給などさまざまな対策を講じていく方針は全く変わらないと述べた。
安倍政権下で日銀が進めた大規模な金融緩和について、片岡委員は、物価安定目標の達成には至っていないものの「デフレの状況にあった日本経済を物価がマイナスではない状況に持っていったという意味で、非常に効果があった」と述べた。
次期自民党総裁に有力視されている菅義偉官房長官は「地方銀行の数が多い」とたびたび発言し、地銀再編に言及している。
地域金融機関の収益性低下について、片岡委員は地域の人口や企業数の減少で地域金融機関同士の競争が激化していることが収益性低下の構造的要因だと指摘。収益性と経営効率性の向上が地域金融機関の大きな課題で、「その課題を克服するためには金融機関の間での統合や連携も選択肢の1つになり得る」と述べた。
その上で「統合や連携が自らの収益力向上につながるか、金融仲介機能の適切な発揮を通じて顧客や地域経済にプラスの影響をもたらすかといった観点からその意義を見極めていくことが重要だ」と指摘した。
ただ、追加緩和時に金融機関などへの副作用軽減策を導入すべきかとの質問には「そうした認識は今のところ持っていない」と述べた。
金融政策運営について、片岡委員は午前のあいさつで、資金繰り支援や流動性供給だけでなく、今後の物価下落圧力を可能な限り抑制することが必要だと指摘。政策金利のフォワードガイダンスの修正などが必要だと指摘した。
会見で片岡委員は、現状の金融政策の枠組みでは「十分ではない」と述べ、「2%の物価目標に到達していない現状の中では、枠組みの変更を考えていく必要がある」と語った。「マイナス金利の深掘りのみにこだわっているわけではない」と述べ、イールドカーブ・コントロール(YCC)の下、短期・長期双方の金利引き下げが望ましいとの見方を示した。
片岡委員によると、3日の沖縄県金融経済懇談会では、金融機関の出席者から、コロナの影響長期化が見込まれる中、これまで以上に県内企業に寄り添いながら資金繰り支援や経営改善支援をしていく必要があり、コロナ対応特別オペの期間延長や必要に応じて新たな措置を求める声が出たという。片岡委員は会見で、「当面、感染症の影響を注視し、必要があれば金融政策面の対応を躊躇なく講じていく方針だ」と発言したことを明らかにした。
東京株式市場では日経平均株価が堅調に推移し、コロナの感染拡大を受けて急落する前の水準を上回っている。市場では、コロナの影響で厳しい状況が続く実体経済とのかい離を懸念する声も出ているが、片岡委員は足元の株高が「バブルにつながるとの認識は微塵も持っていない」と述べた。