発熱患者、病院に直接相談へ 保健所通さぬ仕組み整備
厚生労働省は今冬に想定される新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行に備え、発熱患者の診療体制を強化する。保健所などを介して医療機関へつなげる現在の仕組みから、直接かかりつけ医など地域の医療機関へ連絡できるよう変更する。患者の相談に応じられる医療機関を十分確保できるかが課題となる。
現在、発熱の症状が出た場合、患者はまず地域の保健所などが設置する「帰国者・接触者相談センター」に連絡し、同センターが検査できる医療機関につなげるかどうかを判断している。
インフルエンザの検査をする人は、多いシーズンで最大3000万人に上る。新型コロナとの区別がつきにくく、現状のままでは相談センターを担う保健所に相談が殺到する恐れがあった。再び業務が逼迫し、検査の目詰まりを起こさないために、同省は医師会などと協議を重ねていた。
厚労省は4日、自治体に対し10月末までに発熱患者が、かかりつけ医などの医療機関に直接電話相談できるような体制整備を求めた。相談した医療機関が対応できれば、受診した上で必要と判断されたら検査を受けられる。体制が整った自治体から、地域住民に受診方法の変更を呼びかける。
どの医療機関に連絡すればいいのか迷った場合は、帰国者・接触者相談センターが衣替えした「受診・相談センター」(仮称)に電話連絡し、受診できる医療機関などを紹介してもらう。発熱患者の診療や検査ができる医療機関をホームページなどで公表するかどうかは自治体の判断に委ねる。
地域の医療機関に対しては、自身の診療所で診療や検査ができない場合に適切な医療機関を紹介できるよう、医療機関の間で情報共有しておくことも求めた。
新たな仕組みに移行した際に課題となるのは、一部の医療機関に負担が集中しないように、多くの診療所で新型コロナとインフルエンザ双方の検査ができる体制づくりだ。厚労省は地域の医療機関に新型コロナの検査も請け負ってもらうために、抗原検査の能力を現状の1日3万件程度から20万件に引き上げるとしている。
抗原検査のキットは新型コロナの感染の有無が30分程度でその場でわかるのがメリットだが、鼻の奥の粘液を採取する必要があり、医師にも感染リスクがある。小規模な診療所では、発熱者とそれ以外の動線を分けることが難しい施設も多い。
厚労省は、地域の診療所に感染防護具が行き渡るように支援するとしているが、実際にどれだけの医療機関から協力を得られるかは未知数だ。
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