ポルトガルに暮らす子供や若者が、欧州連合(EU)加盟国を含む33カ国の政府に対し、気候変動対策の強化を求める裁判を欧州人権裁判所(仏ストラスブール)に起こした。
ポルトガルは近年、熱波や山火事などの被害に見舞われており、8歳から21歳までの原告6人は「若者たちの将来を守るために効果的で急を要する排出削減の取り組みに失敗している」と主張。受理された場合、常設の人権救済機関である欧州人権裁判所で気候変動について争われる初めてのケースとなる。
「私たちが耐えた記録的な熱波は始まりに過ぎないと知り、恐ろしいと感じている。残された時間は極めて短く、政府に私たちを保護させるためにはあらゆることをする必要がある」。カタリーナ・モタさん(20)は、提訴を発表した9月3日の声明で原告に加わった動機を説明した。
カタリーナさんが暮らすポルトガル中部では2017年の夏から秋にかけて大規模な山火事が続き、120人以上が犠牲になった。コスタ首相が「記憶にない大災害」と呼んだ一連の山火事は、原告団がクラウドファンディングで訴訟資金を募るきっかけとなった。
私は、被災地を取材するためにこの年11月に現地を訪れた。大部分が焼失して墨絵で描かれたような光景が広がった国立公園や、「燃え広がる速度が例年の2〜3倍だった」と語る消防士の証言が強く印象に残っている。火の手は住宅地にも迫り、多くの人たちが車で避難する途中に炎や煙に巻き込まれて命を落とした。
つづき
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200917/pol/00m/010/003000c