【判決要旨】東京電力福島第一原発事故被災者訴訟の仙台高裁判決(2020年9月30日)
2020年09月30日
東京電力福島第一原発事故被災者訴訟で、9月30日の仙台高裁判決の要旨は次の通り。
略
【国の責任】
長期評価は国の知見とすべきもので、国は東電と同じ知見を同時に認識していた。経済産業相が東電に、直ちに長期評価を踏まえた試算を指示し、あるいは自ら試算していれば、遅くとも02年末ごろまでには、10メートルを超える津波の可能性を認識できた。長期評価は相当程度に客観的、合理的根拠を有する科学的知見だ。原告らが主張する結果回避措置が実施できなかった、または実施しても事故を回避できなかったという国の主張は採用できず、結果回避可能性があったと推認される。
原発の安全性を確保するために東電を規制する立場にある国は、津波対策などを適切に講じているかを厳格に判断することが期待されていた。
しかし、東電から長期評価の科学的根拠についてヒアリングした原子力安全・保安院の対応は、不誠実な東電の報告を唯々諾々と受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかった。
国は06年の勉強会における東電の報告で、敷地を超える津波が来れば重大事故を起こす危険性が高いことは現実に認識していた。国の規制権限の不行使は、遅くとも06年末までには許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き、国家賠償法上、違法だ。
略
http://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1695