昨年7月に京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)が放火され、36人が死亡、33人が重軽傷を負った事件は12月16日、殺人容疑などで逮捕された青葉真司容疑者(42)の勾留期限を迎える。主治医だった男性医師が11日までに京都新聞社の取材に応じ、治療の詳細を明かした。体の9割に重度のやけどを負い、当初の予測死亡率は「95%以上」。わずかに残った皮膚を培養して移植するなど12回の緊急手術を重ねて、救命した。
【図表】長い時間かけた治療経過
「正直、厳しいな…」。事件翌日の昨年7月19日、医師は京都市内の病院の集中治療室(ICU)で初めて青葉容疑者と対面した。血圧や酸素量が極めて低く「いつ絶命してもおかしくない状態」だった。翌20日に自身が当時勤務し、やけどの専門治療ができる近畿大病院(大阪府大阪狭山市)に搬送した。
青葉容疑者はやけどの3区分で最も重く、神経まで損傷する「3度熱傷」を体の93%に負っていた。最初に施したのは、焼けた皮膚を電気メスではぎ取ってコラーゲンなどでできた「人工真皮」を貼る手術。皮膚を除去すると体温が下がって心停止しかねないため、途中で中断して数日の間隔を空けた。この手術は4回、約20日間に及んだ。
次は真皮の上から表皮を移植する手術を実施した。やけど治療では「スキンバンク」に凍結保存されている他人の皮膚を移植するのが通例だが、医師は容疑者自らの細胞を培養する方法を選んだ。京アニ事件では多くの被害者が重いやけどを負っており、「スキンバンクの皮膚が不足し、被害者に供給できない事態は避けたかった」と考えた。
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