中国“最恐”のテレビ番組。それが「315晩会」だ。
毎年3月15日の世界消費者権利デーに放送される特別番組で、1991年から続く長寿番組である。さまざまな企業に潜入取材し、違法行為や不道徳な行いを暴きまくるという内容だ。
(中略)
これだけだと、たんなる報道番組のように思えるが、“最恐”である315晩会には、加えて2つの特徴がある。
第一に、放送後に企業が速攻で謝罪するところまでがセットだという点だ。315晩会は中国中央電視台(CCTV)のテレビ番組だが、最高人民法院、最高人民検察院、国家市場監督管理総局などの政府機関も共同主催者として名を連ねている。番組放送後すぐに彼らは動き出す。
政府当局による指導、処罰が待っているだけではない。世論の注目度の高い番組だけに、取りあげられた企業がすぐに謝罪しなければ、「ふてぶてしくも歯向かう悪徳企業」というレッテルを貼られて、メディアと世論から袋だたきにされてしまう。そのため、経済界には「315晩会対応マニュアル」があり、番組で取りあげられたら、それに従って即座に謝罪するのが常だ。
今年の315晩会では、日産自動車の高級車「インフィニティ QX60」のギアボックスが頻繁に故障するという問題も取りあげられた。放送終了後、まもなく日産は謝罪文を発表。被害者に対する専用窓口を開設し、当局と世論の監督の下、誠意をもって対応すると約束している。ちなみにこの謝罪文もテンプレートが出回っており、余計な抗弁をせずに謝罪し対応を約束することがお決まりになっている。
企業側からすれば、万が一槍玉に挙げられれば、超速で対応しなければいけないという意味で、安心できない“最恐の日”となる。消費者側からみれば、こんな悪徳企業があるのかと不安になりつつも、大企業が土下座する姿を見てすっきりできる。暗い喜びが得られるエンターテインメントだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/75a9e04c6e651f0209e8531127b8ac0e21f4734f