English Articles
TOKYO発
「見えない光」でコロナと対決! 紫外線利用の家具や家電でウイルス退治 パリでお披露目
2021年9月20日 07時03分
パリの展示会に出品されたオカムラのコート掛け「リリオ」=いずれも石井幹子デザイン事務所提供
猛威を振るう新型コロナウイルスのため、私たちを取り巻く社会の姿はすっかり変わった。ウイズコロナ時代を見据えて、見えない光「紫外線」を利用してコロナと対峙(たいじ)する家具や家電が登場、このほどパリでお披露目された。身近な生活空間の「コロナフリー」を目指す。
コート掛けの柱部分に設けられた携帯電話などを消毒できる収納スペース
紫外線の力でコロナウイルスを不活化(感染力を弱める)する空気除菌器を、スタンレー電気(本社・目黒区)が開発した。
スタンレー電気が開発、販売する空気除菌器「アルヌーヴ」の卓上型=同社提供
同社は自動車のヘッドライトやLED照明を手掛ける“光のプロ”。開発した卓上型の空気除菌器「アルヌーヴ」は、紫外線の中でも波長が短く、不活化効果が高いとされる世界最高水準の深紫外線を照射するLEDが使われている。
診察室や会議室など四畳半〜六畳の室内で、コロナウイルスを99・9%以上不活化できるという。予定販売価格は四万九千円。自動車やトイレ、パソコンの横などに置く小型タイプや、待合室や休憩スペースなどより広い部屋向けの製品の発売も予定。同社の担当者は「紫外線はウイルスの不活化の効果が報告されており、『見えない光』を生かしていきたい」と訴える。
椅子の「オヴィルス」には中に靴の収納スペースがある。長細いベンチ(右)と正方形のスツールの2タイプ
スタンレー電気の紫外線技術を導入した椅子やコート掛けを製作したのは、家具・産業機械メーカーのオカムラ(本社・横浜市)。椅子「オヴィルス」には靴の収納スペースがあり、帰宅した際に靴を入れると、数分でウイルスの不活化が完了するという。ふたは、つま先をかざすとフットセンサーで自動的に開く。玄関に置いて腰掛けとして使うことを想定している。
コート掛け「リリオ」にも、柱の中ほどに深紫外線の光源を内蔵した収納スペースがある。帰宅時にマスクや携帯電話を入れて、外からのウイルス持ち込みをブロック。こちらも収納スペースはハンドセンサーで自動開閉する。人体への影響を考慮し、紫外線は収納スペース内でのみ照射される。
いずれも一台しかない試作品で、製品化は検討しているものの、発売時期などは未定。
これらの製品群は、照明デザイナー、石井幹子(もとこ)さん(82)と長女リーサ明理(あかり)さん(50)がデザイン・コーディネートした。今月、パリで開かれた国際的なインテリアとデザインの展示会「メゾン・エ・オブジェ」で展示され、海外のバイヤーから引き合いもあったという。
外出先から帰ると、靴を収納して消毒=いずれもオカムラ提供
石井さんは「屋内でも靴を脱がない習慣の欧米でも、コロナ禍以降、帰宅すると靴を脱いでスリッパに履き替える人も増えた」と欧米での傾向を指摘。手洗いや消毒、握手を避けるなど、新しい生活習慣が生まれている。「面倒なことが増えたわけだが、コロナと闘わなくてはいけない。家にウイルスを持ち込まない、コロナフリーが必要」と訴え、「見えない光の紫外線が脚光を浴びる時代かもしれない」と話している。
<紫外線> 赤から紫の可視光線の外側にある、目に見えない不可視光線。紫の外側にあるという意味で紫外線(赤の外側は赤外線)といい、UV(ultra−violet=ウルトラ・バイオレット)とも称される。近紫外線、遠紫外線など波長によってさまざまな種類があり、日焼けの原因となる。目に危険なケースもあり、紫外線にさらされるゲレンデなどではゴーグルで目を守る。
文・加藤行平
https://www.tokyo-np.co.jp/article/132026