さまざまな異物でペニスが絞めつけられた状態を「陰茎絞扼症」という。
主に成人男性に見られる症状で、一般的な動機は悪戯・自慰・勃起力や性的興奮の増強・尿失禁や包茎の自己治療である。
多くの患者は、精神疾患も併発しているとされる。
異物の種類としては金属リング、バンド、パイプ、ボトル、金属やプラスチックでできた糸、さまざまな形状とサイズのゴム製品などが多く見られる。
患者が子供の場合、輪ゴム、糸、髪の毛などが典型的だという。
コンパートメント症候群(外傷が原因で筋肉組織などが腫れて、その中にある筋肉、血管、神経などが圧迫され、循環不全のために壊死や神経麻痺を引き起こすこと)の進行を防ぐため、ペニスから異物を早期に取り除くことが最も重要である。
非金属製の異物は大抵簡単に取り除けるが、金属製の異物は取り除くのが難しいうえ、緊急に処置を施さなければペニスに壊滅的な結果をもたらす可能性が高く、泌尿器科にとっては極めて困難な事態の1つといえる。
治療には泌尿器科が容易に入手できない産業用機器が必要となり、しかも、それらを使用するためのスキルと専門知識も求められる。
医学誌「International Journal of Surgery Case Reports」では、8歳少年のペニスを絞めつけていた金属ナットを除去したタンザニアの事例が報告された。
少年は金属ナットをペニスに装着してから11時間後、ペニスが腫れて排尿困難になった状態で病院を訪れた。少年は学校で友人にナットを装着されたと言ったが、友人の意図を説明しようとしなかった。
母親は、息子がいたずら好きかつ暴力的で、友人の下唇を噛んだことで潰瘍を引き起こしたり、別の友人の歯を石で折ったりしたことを報告した。
少年は4人兄弟の3番目で、家族に精神病の病歴はない。
少年は泌尿器科に到着したとき落ち着いており、バイタルサインも正常で安定していた。
包茎に錆びた金属ナットが装着され、陰茎と包皮に腫れが見られたが、肌の色に変化はなく、触ると柔らかかった。
また、尿の流れが悪いことが観察されたという。
ナットを除去する手術には、機械エンジニアが持ってきたボルトカッターを用いられた。
手術を行ったのは泌尿器科医と泌尿器科の研修医だった。
小さなプラスチックの定規とガーゼをペニスとナットの間に挿入することで、ナットを切断するときに皮膚を保護。
ペニスの背側と腹側でナットをカッターの刃先に挟み、ハンドルを数回握ってナットが完全に切断された。
少年は手術中に皮膚に軽度の裂傷を負ったが、その傷口は生理食塩水で洗浄された後、陰茎の直立位置にポビドンヨード(殺菌消毒剤)が塗布された。
術後は72時間にわたって抗生物質、経口鎮痛薬、破傷風トキソイドが投与されたという。
後に精神科医が少年と対話し、中等度の反抗挑戦性障害(大人や周囲の人に反抗的な態度をとってしまう症状)と診断した。
しかし、母親は息子に精神薬を服用させることを拒否した。
少年はペニスの腫れが引いて問題なく回復し、手術の12時間後には帰宅を許可された。
退院5日後、少年はクリニックで診察を受け、腫れが解消し、正常な排尿と朝の勃起が確認された。
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