江戸時代の法制史が専門の早稲田大学法学部の和仁かや教授は「江戸時代の裁判記録は関東大震災で焼失したものも多く、まとまって見つかるのは大変珍しい。江戸時代の役人が慎重に刑罰を判断していたことがうかがえる貴重な資料だ」としています。
■裁判記録 保管の仕組み
今回、新たに見つかった江戸時代の裁判記録。
なぜ、これまで気づかれなかったのでしょうか。
裁判所の記録や資料は、最高裁判所の規定などにより▼裁判記録や判決などの「裁判文書」と、▼最高裁の規定や通達などの「司法行政文書」に分けて管理されていて、平成21年に制定された公文書管理法や最高裁判所長官と総理大臣の申し合わせに基づき、重要な資料は国立公文書館に移管されることになっています。
しかし、どちらにも該当しない資料は管理のルールがありません。
最高裁によりますと、過去にも各地の裁判所で庁舎の改修や掃除などの際に作成や保管の経緯がわからない明治時代や昭和初期などの資料が見つかったことがあるということです。
このため最高裁は昨年度からこうした資料の調査に乗り出し、歴史的に価値があるものについては、順次、国立公文書館に移管することにしました。
昨年度、調査の対象となった仙台と名古屋の高等裁判所管内では、あわせて300あまりの資料が新たに見つかったということです。
公文書の管理に詳しい三宅弘弁護士によりますと、裁判所は戦後に行政機関の一部から独立した存在となったため、戦前の資料は法的な管理の対象から抜け落ちている可能性があるということです。
三宅弁護士は、「古い資料は歴史的な価値だけでなく、現在の司法制度が作られた過程などを知る手がかりとなる。調査をより迅速に丁寧に進めることが重要だ」と話しています。