【8月8日 AFP】ウクライナ中部クレメンチュク(Kremenchuk)で、テチアナさん(31)は6月の結婚式当日、大きな音にたたき起こされた。シャンパンのコルク栓を抜く音なら良かったのだが、実際は自宅近くにロシアのロケット弾が着弾した音だった。
デザイナーのテチアナさんはAFPに「最初は雷鳴かと思ったが、空に雲はなく、砲撃だったと気付いた」と述べ、砲弾の直撃に備えて部屋から廊下に急いで避難したと振り返った。
夜明け前の攻撃による被害に動揺したものの、テチアナさんと婚約者タラスさんは、6時間後に迫った式を決行する意思を確かめ合った。
「初めは式をキャンセルすべきではないかと思ったけれど、婚約者から予定通りにしようと言われた」と語ったテチアナさんは、「戦争に、私たちの計画を台無しにする権利はない。私たちには家族をつくり、人生を満喫する権利がある」と強調した。
■長期化する戦争
クレメンチュクが位置するポルタワ(Poltava)州では、2020年に1300組が結婚したのに対し、2月24日にロシアがウクライナに侵攻した後の6週間で1600組が結婚した。
首都キーウでは、結婚の急増ぶりはさらに顕著だ。5か月間に9120件の婚姻届が提出され、2021年の結婚式の数が1110件だったことから、8倍以上も増加したことになる。
キーウ中心部の役所ではある土曜日、40組以上のカップルが門出を迎えた。
アナスタシアさん(22)との結婚を控えたビタリーさん(25)は、戦地に赴くため軍服を身にまとっていた。「戦争の最中に結婚するのは最も勇敢かつ困難な決断だ。次に何が起こるか分からないのだから。すぐに前線へ行くかもしれない」と話した。
ウクライナでは婚姻手続きが簡素化され、届けを出したその場で結婚できるようになったことも、増加を後押ししている。ビタリーさんは「戦争は続く。今結婚した方がいい」という考えだ。
■ウクライナ人の反骨精神
公務員のチャルニフさん(21)は3月初め以降、息をつく暇もなく結婚儀礼を執り行っており、戦時中の特別な役割を果たしていると自負している。「公務員として国民を心の面で支えることで、国のためになれるはずだ」
戦時下では、若者が恋愛を結婚へと急いで成就させる傾向が強いことは歴史的に証明されている。第2次世界大戦(World War II)中の1942年、米国では180万組が結婚したが、この数字はその10年前と比べて83%の増加だった。
チャルニフさんによると、特に兵士の間での結婚が増えているという。「こういう困難な状況の中では、あす何が起こるか分からない。皆、可能な限り早く結婚しようとしている」
(以下ソース)
https://www.afpbb.com/articles/-/3417700