岸田文雄首相が24日表明した新型コロナウイルス感染者の全数把握方法の見直しは、全国一律の導入は見送られ、調整に難航した苦悩が色濃くにじむ。当初は「ウィズコロナ」を演出するため「第7波」収束後の抜本的な見直しを見据えていたが、かつてない爆発的な流行は想定に反して長期化。疲弊する医療現場や保健所の強い声に押されて重い腰を上げた格好で、後手に回った印象は拭えない。
当初のシナリオ
この日、関係閣僚と協議を終えた首相は、リモートで取材に応じ「高齢者をはじめリスクの高い人の命を守ることを最優先に考え、さらなる対策強化を指示した」と見直しの狙いを説明。医師による患者情報の入力を高齢者などに絞ることで「必要な診療時間を確保していく」と強調した。
ただ、今回はあくまで「緊急避難措置」とし、自治体の判断に委ねた点でも当初描いていたシナリオには程遠いことがうかがえる。
お盆明け念頭に
首相サイドはもともと、「第7波」が下降局面に入ると見込んでいたお盆明けを念頭に全国一律での全数把握見直しなど「コロナ対応の一大転換」(政府関係者)を模索していた。
だが、感染は収まるどころか、新規感染者は連日20万人台を数え、23日には1日の死者数が過去最多の343人に。8月の月間死者数は初めて5千人を超え、「完全に当てが外れた」(首相周辺)。21日に判明した首相自身の感染も政府の段取りを狂わせた。