部分動員令を施行するなど、劣勢があらわになったロシア陣営。ここにきて海外メディアのあいだでは「核兵器使用の悪夢が起きる場合」を想定した分析記事が目立つ。
英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は、軍事に詳しいキングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授らの分析をもとに、プーチンが戦術核兵器を使用する3つのシナリオについて報じている。
一つ目のシナリオが「殺戮を目的としない核攻撃」だ。この場合、地下や、ヨーロッパとアジアの間にある黒海、あるいはウクライナ上空での核兵器使用が想定される。核爆発が直接人命を奪うことはないものの、放射性降下物が近辺に降り注ぐリスクが高い。しかし、この軍事的威嚇は世界的な大反発を招くだけで、軍事的利益は少ないとする見方が強い。
次に考えられるのが、ザポリージャ原子力発電所などのウクライナにあるインフラを狙った核ミサイル攻撃だ。しかし、ロシアが自らの領土とみなす地域を攻撃することには「ほとんど意味がない」と指摘する専門家もいる。ウクライナに駐留するロシア兵は装備も充分ではないため、自国の兵士も被害を被るだろう。
最悪のケースとして挙がるのが、ロシアが米国を含むNATO加盟国に核攻撃するシナリオ。実際に、ロシアのシンクタンク「カーネギー・モスクワセンター」の元所長を務めたドミトリー・トレニンはこの方法を提案したという。
トレニンはロシア国営テレビの取材に対し「ロシアがウクライナに対してのみ核兵器を使用すると考えるのは間違いだ」と述べている。だが、もしそのような事態が起きれば、ロシアは壊滅的な報復攻撃にさらされる可能性が高い。
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