日本の「理想」語った首相演説 論説副委員長・榊原智 2019.10.08
安倍晋三首相が臨時国会初日に行った所信表明演説に、近現代日本の理想を語ったくだりがあった。
今から100年前、第一次世界大戦後のパリ講和会議における、日本の歴史的行動への次のような言及である。
「新しい時代に向けた理想、未来を見据えた新しい原則として、日本は『人種平等』を掲げました」
「世界中に欧米の植民地が広がっていた当時、日本の提案は、各国の強い反対にさらされました。しかし、決して怯(ひる)むことはなかった」
「日本が掲げた大いなる理想は、世紀を超えて、今、国際人権規約をはじめ国際社会の基本原則となっています」
牧野伸顕(のぶあき)ら日本全権団は、創設される国際連盟の規約に人種差別撤廃条項を盛り込むよう求めた。有色人種の国が国際会議で人種差別への異議を初めて唱えた重要な出来事だった。
「人種平等提案」は世界で大きな反響を呼び、採決では多数を得たが、英米などの反対で不採択となった。
だが、牧野は連盟国総会議で「今回は之(これ)以上我(わが)提案に固執せさるも将来機会ある毎(ごと)に目的の貫徹に就(つ)き主張するを怠らさるへし」と演説し、全文を議事録に掲載させた。
総会後、英全権ロイド・ジョージは牧野に握手を求め、「日本の態度に敬服する」と語った。
日本が掲げた理想は今、世界の普遍的価値となっている。日本の首相が国会で「人種平等」への自国の貢献を説いた意義は大きい。
日本人は、人種平等の旗手としての日本の歩みを、歴史教育を含め語り継いでいくべきだ。
安倍首相は「今を生きる私たちもまた、令和の新しい時代、その先の未来を見据えながら、この国の目指す形、その理想をしっかりと掲げるべき時です」とも演説した。
現代日本が掲げるべき理想とは何だろうか。世界に関する文脈で考えれば、全体主義や独裁・強権政治を除いていくことではないか。
これらが世界の多くの人々を虐げ、日本の独立と繁栄、国民の自由を脅かしている。
ところが、中国の共産党独裁政権に対する現代日本の姿勢は安倍政権を含め過度に宥和(ゆうわ)的で、危うさをはらんでいる。怯んでいては100年後の子孫に顔向けできまい。
https://www.sankei.com/column/news/191008/clm1910080007-n1.html 人権配慮の企業、政府調達で優遇へ
https://www.sankei.com/article/20220913-W5DYXFSVKVKXXMKH5EH2RLKTAE/