●社会学者の橋爪氏「核戦力の無力化」
これについてどう考えれば良いか――。
ちょうど良い論考がありました。ウェブ評論サイト『プレジデントオンライン』では、こんな対談が掲載されているのです。
■「ロシアを常任理事国から外す必要がある」ウクライナ戦争の戦後処理でプーチンに与えられる屈辱
―――2022/11/17 13:00付 プレジデントオンラインより
社会学者の橋爪大三郎氏と大澤真幸氏の対談書『おどろきのウクライナ』の抜粋記事ですが、これが大変に興味深いのです。
橋爪氏はロシアのウラジミル・プーチン大統領自体、自身の健康問題に加えて、戦争の敗北の責任を負う形で、政権の座にとどまることはできないと見ます(政変、失脚、あるいは平穏な交代のいずれであるかは別として)。
ただ、それと同時にロシアでプーチンが情報機関や秘密警察などの「内務官僚系の組織」を使って権力を維持してきたことを踏まえるならば、プーチンが去ったとしても、現在のプーチン政権と似たような権力が形成され、似たようなことが続くはずだ、というのが橋爪氏の見立てです。
そうなれば、「ロシアそれ自体をどうするか」という問題が出てきます。
「秘密警察に支持される専制的な権力が、巨大な核兵器を持っている。これは、ヨーロッパにとってもアメリカにとっても、世界にとっても大変に問題なわけだから、これをなんとかしたい」。
では、具体的にどうすれば良いか。
橋爪氏はこれについて、ロナルド・レーガン政権時代にソ連解体を早めたとされる「スターウォーズ計画」を引き合いに出し、米国は10年や20年かけてでも、ロシアの大陸間弾道弾、戦略核兵器を無力化する手法を開発する努力を続けると予想します。
つまり、戦略核が無力化されれば、旧ソ連時代からの核戦力が無力化され、ロシアは単なる「田舎の独裁政権」に成り下がる、というのです。そのロシアの現状に不満を抱く知識人などがロシアを新しく生まれ変わらせるかどうかは、ロシアの問題です。
なるほど、この視点は斬新です。ついでにいえば、もしもロシアの核戦力を無力化することに成功すれば、北朝鮮の核・ミサイル開発問題も(米国にとっては)脅威ではなくなりますし、さらには中国についても、核戦力を無力化させることができてしまいます。
ただし、この核の無力化については、まだ当面時間がかかるでしょう。