電子レンジに絶対入れてはいけないものと言えば、たまごとぶどう。たまごは爆発しますし、ぶどうはテスラコイルみたいな厳かな光を発し、「こ、これは…」と呆然としているとボッと燃えたりします。畑のぶどうなのに。
この奇妙な現象にまじめに取り組む論文が月曜、カナダから高名な科学誌に発表され、たいへん注目を呼んでいます。
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家庭用の電子レンジの周波数は通常、2.45GHz帯で、波長はだいたい12cm。この波長と同じ長さの物体なら、いろいろ面白い現象が起こることは想像がつくんですが、ぶどうは、そこまで大きくはないですよね。でも、ここで注目なのは、ぶどうの外の波長ではなく、ぶどうの中、です。
屈折率 = 真空中の光速度 ÷ 物質中の光速度なので、ぶどうの屈折率は1.333とかそんなもの。論文共著者のKhattack研究員によると、空中を伝わる周波数よりぶどうを伝わる周波数のほうがずっと遅くなって、「だいたい10分の1になる」んだそうですよ? つまり、ぶどうを通るときの波長は12cmじゃなくて1.2cm。
ちょうどぶどうの大きさと完全に一致、です。なので、ぶどうを電子レンジに放り込んでチンすると、ぶどうにマイクロ波が入ったら最後…「直径が波長とほぼ同じボールなので、ここにマイクロ波がトラップされて、出れなくなっちゃう」のです!!! ぶどう、おそるべし!
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トラップされるとどうなるかというと、ぶどうの中心に電磁場が集まって、内側から熱されていくんです。で、ぶどうを2個くっつけると、接点に電磁場の中心がひゅんと移動して集中度も倍増し、周辺の空気がイオン化されてプラズマ放出、となるってなわけです。これはぶどうをカットしても、しなくても起こります。ちなみにぶどうの場合、プラズマの中身は主にカリウムとナトリウムでした。