実際のところ、幼かったモドリッチは戦争の恐怖をそれほど感じていなかったという。
しかし、モドリッチの「サッカーの父」と称された指導者、トミスラフ・バシッチは当時をこう振り返っている。
「何千もの手榴弾が丘の上で爆発し、NKザダルのチームがトレーニングしていたピッチにまで落ちてきた。僕たちはそのたびにシェルターに駆け込んだ。サッカーは現実から逃げる手段だった」
2002年、モドリッチは16歳で国内の有力クラブ、ディナモ・ザグレブの下部組織に迎え入れられた。
トップチームに昇格した後の2003年、彼はクラブと10年の長期契約を結ぶ。この時の契約金で、モドリッチは家族が暮らす家を購入した。この時にようやく、一家は難民生活を終えることができたという。
2005年に移籍から戻るとチームのリーグ3連覇に貢献し、2007年にはリーグ年間最優秀選手に選出された。トッテナム・ホットスパーを経由して、2012年に現在プレーするレアル・マドリードに移籍した。
今大会でクロアチアは、決勝トーナメントすべての試合が延長戦という激闘を制し、決勝の舞台に駆け上がった。
イングランドとの準決勝も延長戦での逆転劇。満身創痍で終盤は立ち上がるのもやっとだったモドリッチだが、119分で交代する瞬間まで気迫を失わなかった。