緑地の少ない場所で子ども時代を過ごした人は、その後の人生において精神疾患になるリスクが55%も高かったと最新の調査で示されました。都市は建物の建設で緑地が犠牲になりがちですが、人の生活に有益な「緑地」を考慮した都市計画の必要性が叫ばれています。
Residential green space in childhood is associated with lower risk of psychiatric disorders from adolescence into adulthood | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/02/19/1807504116
Kids who grow up near green space have better mental health — Quartz
https://qz.com/1559863/kids-who-grow-up-near-green-space-have-better-mental-health/
デンマークにあるオーフス大学の研究者たちは1985年から2013年までに撮影された衛星写真を使って、0歳から10歳までのデンマークの子ども94万3027人がどれぐらい緑地の近くで暮らしていたのかがわかる地図を作成しました。調査では対象者のメンタルヘルス、社会経済的な状況、居住地といった時系列的なデータを収集し、研究者は子どもたちの「緑地へのアクセスしやすさ」と「メンタルヘルス」とを比較。この結果、精神疾患と、緑地へのアクセスしやすさとの間に顕著な関連性が見つかったとのこと。
「子ども時代に一貫して緑で囲まれた環境で育つと、後の人生で精神疾患になるリスクは低くなります」と研究を行ったKristine Engemann氏は述べています。最も緑地レベルの低い場所に暮らす子どもたちは、緑地レベルの高かった子どもたちに比べ、他のリスク要因を考慮しても精神疾患にかかるリスクが55%も高かったそうです。
なぜ緑の多い環境が子どもたちのメンタルヘルスを向上させるのかというメカニズムは不明ですが、これまでの研究で、自然の近くで暮らすと人は運動をするようになり、社会的結合が強まるという研究結果も示されています。また、緑地の多い学校に通う子どもは、緑地の少ない学校に通うこどもよりも認知が発達しているということを示す研究結果も存在します。ただし、上記の研究はいずれも2つの事項の「関連性」を明らかにしたものであり、因果関係は証明されていない点には注意が必要です。
「都会の環境は人間が『ストレスフル』だとみなすものの典型です」とEngemann氏は述べ、汚染された空気や感染症、社会経済環境の貧しさなどが精神疾患の発達リスクを増加させているとしました。また、都会は子どもたちがストレスを解消させるような場所が少ないものですが、学校から帰った後に遊べる庭や公園があると、ストレスがあっても子どもは知的能力をすぐに回復できるようになるとも述べています。
一方で、世界人口の50%以上が都会に住んでいるという現代において、都心にはより優れた健康・教育リソースが存在するのも確か。高密度化する都心では建物を建てるために緑地が犠牲にされがちですが、Engemann氏は「緑地が単なる飾りではなく、人が暮らす上で有益な価値のあるものだと認識されることが大切です」と述べ、人と緑のつながりに着眼した都市デザインを重視すべきだと主張しています。
GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20190228-green-space-mental-health/
Residential green space in childhood is associated with lower risk of psychiatric disorders from adolescence into adulthood | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/02/19/1807504116
Kids who grow up near green space have better mental health — Quartz
https://qz.com/1559863/kids-who-grow-up-near-green-space-have-better-mental-health/
デンマークにあるオーフス大学の研究者たちは1985年から2013年までに撮影された衛星写真を使って、0歳から10歳までのデンマークの子ども94万3027人がどれぐらい緑地の近くで暮らしていたのかがわかる地図を作成しました。調査では対象者のメンタルヘルス、社会経済的な状況、居住地といった時系列的なデータを収集し、研究者は子どもたちの「緑地へのアクセスしやすさ」と「メンタルヘルス」とを比較。この結果、精神疾患と、緑地へのアクセスしやすさとの間に顕著な関連性が見つかったとのこと。
「子ども時代に一貫して緑で囲まれた環境で育つと、後の人生で精神疾患になるリスクは低くなります」と研究を行ったKristine Engemann氏は述べています。最も緑地レベルの低い場所に暮らす子どもたちは、緑地レベルの高かった子どもたちに比べ、他のリスク要因を考慮しても精神疾患にかかるリスクが55%も高かったそうです。
なぜ緑の多い環境が子どもたちのメンタルヘルスを向上させるのかというメカニズムは不明ですが、これまでの研究で、自然の近くで暮らすと人は運動をするようになり、社会的結合が強まるという研究結果も示されています。また、緑地の多い学校に通う子どもは、緑地の少ない学校に通うこどもよりも認知が発達しているということを示す研究結果も存在します。ただし、上記の研究はいずれも2つの事項の「関連性」を明らかにしたものであり、因果関係は証明されていない点には注意が必要です。
「都会の環境は人間が『ストレスフル』だとみなすものの典型です」とEngemann氏は述べ、汚染された空気や感染症、社会経済環境の貧しさなどが精神疾患の発達リスクを増加させているとしました。また、都会は子どもたちがストレスを解消させるような場所が少ないものですが、学校から帰った後に遊べる庭や公園があると、ストレスがあっても子どもは知的能力をすぐに回復できるようになるとも述べています。
一方で、世界人口の50%以上が都会に住んでいるという現代において、都心にはより優れた健康・教育リソースが存在するのも確か。高密度化する都心では建物を建てるために緑地が犠牲にされがちですが、Engemann氏は「緑地が単なる飾りではなく、人が暮らす上で有益な価値のあるものだと認識されることが大切です」と述べ、人と緑のつながりに着眼した都市デザインを重視すべきだと主張しています。
GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20190228-green-space-mental-health/