日本の研究者が率いる米製薬新興企業が今年5月から、マラリアに対する新型ワクチンの臨床研究を米国内で始める。ワクチンは、別の病原体の空っぽのウイルスの表面に、マラリア原虫のたんぱく質を付ける独自の手法で開発した。世界で感染者数が年間2億人を超えるマラリアの予防法の確立を目指す。
マラリアは熱帯・亜熱帯地域で流行が続く。複数のワクチンの開発が行われているが、本格的な実用化に至ったワクチンはない。
臨床研究を行うのは、米東部メリーランド州にある「VLPセラピューティクス」で、米国立衛生研究所(NIH)元上席研究員の赤畑渉(あかはたわたる)さん(45)が代表を務める。
赤畑さんはNIHで、アフリカなどで発生し、高熱や頭痛を引き起こす感染症「チクングニア熱」のウイルスを研究し、その外側にある無害の殻だけを作り出す技術を開発した。
この空っぽのウイルスに、マラリア原虫のたんぱく質(抗原)を高密度に付着させてワクチンを作って動物に与えると、マラリアに対する免疫物質(抗体)が作られることも見つけた。
サルでワクチンの安全性と効果が確かめられたため、米食品医薬品局(FDA)が1月末に臨床研究の計画を認めた。5月から始まる臨床研究では、約30人にワクチンを投与し、マラリアを持つ蚊に刺された場合に感染するかどうかを調べる。効果が確認されれば、大規模な臨床研究を進める。
赤畑さんは京都大で博士号を取得後、2002年にNIHに留学、13年に起業した。京大の大学院生時代、カメルーンでHIVウイルスについての現地調査を行い、エイズに苦しむ患者を目の当たりにした。その経験から、「治療法のない病気を治す薬を作りたい」との思いを抱き、研究を続けているという。
yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190228-OYTET50043/