防災科学技術研究所は人工知能(AI)を活用し、地震による揺れを精度よく予測する手法を開発した。まれにしか発生しない非常に強い揺れにも対応できる。地震の被害想定や緊急地震速報などの精度向上に役立てる考えだ。
防災科学技術研究所は人工知能(AI)を活用した地震の揺れを高精度に予測する「ハイブリッド手法」を開発した
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防災科学技術研究所は人工知能(AI)を活用した地震の揺れを高精度に予測する「ハイブリッド手法」を開発した
新手法は従来使われてきた物理モデルとAIを組み合わせた。物理モデルは方程式を使い、地震の規模や震源からの距離などをもとに揺れの強さを予測している。ただ方程式と観測データがずれるケースがある。AIも頻度が少ない強い揺れを予測するのは難しい。
防災科研は全国約1700カ所に設置した地震計による約20年間の観測データをAIに学ばせた。2082回の地震の計18万6310の地震動記録を機械学習させたうえで、208回の地震の計2万2323の記録を使い性能を確かめた。
2016年に起きた熊本地震で検証すると、従来モデルでは震源地近くの1000ガル(ガルは加速度の単位)を超える非常に強い揺れが過小評価されたが、新手法では観測記録に近い予測結果が得られた。防災科研の久保久彦研究員は「物理モデルと機械学習を組み合わせることで性能が高まった」と話す。
成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61943170X20C20A7000000/