打ち上げに成功したNASAの火星探査機「パーセヴェランス」は、史上初めて米国産プルトニウムだけを動力源としている。これまでロシアから調達していたプルトニウムを国産化したことで、今後の宇宙でのミッションでは原子力電池の活用が加速する。宇宙での“原子力ルネッサンス”の時代が、いま幕を開けようとしている。
米航空宇宙局(NASA)の新しい火星探査機「Perseverance(パーセヴェランス)」は、火星で太古の生命の痕跡を探すミッションに乗り出すことになる。パーセヴェランスは火星探査機としては最大級で、自律性が最も高い。そして米国産プルトニウムだけで動く初の火星探査機でもある。
パーセヴェランスの心臓部にはビール樽ほどの大きさの小さな原子力電池があり、これは放射性同位体熱電気転換器(RTG)とも呼ばれる。RTGは地球上で電気をつくる原子炉とは異なり、発電のために核分裂反応を起こしたり持続させたりする必要がない。そして可動部品もない。
代わりにプルトニウム238の崩壊によって発生する自然の熱を受動的に採取し、電気に変換する。エネルギーと熱を宇宙船に確実に数十年は供給できることから、NASAの20以上ある深宇宙ミッションに欠かせない動力源となっている。実際に2つの原子力電池を搭載して1970年代後半に打ち上げられた探査機「ヴォイジャー」は、いまでも星間空間から通信を続けている。
「プルトニウム238は主にアルファ線によって崩壊し、その際に熱を多く産生するプルトニウム固有の同位体です」と、NASAへのプルトニウムの供給を担うオークリッジ国立研究所のプルトニウム供給プログラムマネージャー、ロバート・ワムは言う。「パーセヴェランスのような小型宇宙船に必要なものは核分裂エネルギーではなく、崩壊熱だけで十分なのです」
■動力源を原子力に切り替えた理由
パーセヴェランスは、原子力発電を電気エネルギーの主要な供給源として利用する火星探査機としては2番目にすぎない。NASAの最初の3つの探査機である「ソジャーナ」「スピリット」「オポチュニティ」は、いずれも太陽光発電を採用していた。しかし、パネルにある程度のほこりがたまると、電力を完全に失う危険性がある。
このためNASAは、12年に火星に到着したキュリオシティを皮切りに、探査機の主要なエネルギー源を原子力発電に切り替えた。当時の米国では宇宙ミッション用の核燃料の備蓄が減少しており、それ以上の核燃料を生産できる施設が米国内にひとつもなかったことを考えると、これは大胆な選択だった。
ちなみに、プルトニウム238は核兵器には使われていない。核兵器に使われるのはプルトニウム239だ。しかし、1980年代後半に冷戦が終結すると、米国は軍縮協定に従ってあらゆる種類のプルトニウムの生産を停止した。
「プルトニウム238の大部分は、当時は国立研究所というよりも国防施設だったサヴァンナ・リヴァー・サイトで生産されたものでした」と、ワムは言う。かつて米国の核兵器の大半を生産していたサウスカロライナ州にある施設のことだ。サヴァンナ・リヴァー・サイトは現在、当時の活動によって敷地内に埋められた核廃棄物の影響で、地球上で最も汚染された場所のひとつとなっている。
続きはソースで
https://wired.jp/app/uploads/2020/08/01162952/Science_MAINIMAGEPIA23305-main-e1596267052241_w1920.webp
https://wired.jp/2020/08/01/nasas-mars-rover-will-be-powered-by-us-made-plutonium/
米航空宇宙局(NASA)の新しい火星探査機「Perseverance(パーセヴェランス)」は、火星で太古の生命の痕跡を探すミッションに乗り出すことになる。パーセヴェランスは火星探査機としては最大級で、自律性が最も高い。そして米国産プルトニウムだけで動く初の火星探査機でもある。
パーセヴェランスの心臓部にはビール樽ほどの大きさの小さな原子力電池があり、これは放射性同位体熱電気転換器(RTG)とも呼ばれる。RTGは地球上で電気をつくる原子炉とは異なり、発電のために核分裂反応を起こしたり持続させたりする必要がない。そして可動部品もない。
代わりにプルトニウム238の崩壊によって発生する自然の熱を受動的に採取し、電気に変換する。エネルギーと熱を宇宙船に確実に数十年は供給できることから、NASAの20以上ある深宇宙ミッションに欠かせない動力源となっている。実際に2つの原子力電池を搭載して1970年代後半に打ち上げられた探査機「ヴォイジャー」は、いまでも星間空間から通信を続けている。
「プルトニウム238は主にアルファ線によって崩壊し、その際に熱を多く産生するプルトニウム固有の同位体です」と、NASAへのプルトニウムの供給を担うオークリッジ国立研究所のプルトニウム供給プログラムマネージャー、ロバート・ワムは言う。「パーセヴェランスのような小型宇宙船に必要なものは核分裂エネルギーではなく、崩壊熱だけで十分なのです」
■動力源を原子力に切り替えた理由
パーセヴェランスは、原子力発電を電気エネルギーの主要な供給源として利用する火星探査機としては2番目にすぎない。NASAの最初の3つの探査機である「ソジャーナ」「スピリット」「オポチュニティ」は、いずれも太陽光発電を採用していた。しかし、パネルにある程度のほこりがたまると、電力を完全に失う危険性がある。
このためNASAは、12年に火星に到着したキュリオシティを皮切りに、探査機の主要なエネルギー源を原子力発電に切り替えた。当時の米国では宇宙ミッション用の核燃料の備蓄が減少しており、それ以上の核燃料を生産できる施設が米国内にひとつもなかったことを考えると、これは大胆な選択だった。
ちなみに、プルトニウム238は核兵器には使われていない。核兵器に使われるのはプルトニウム239だ。しかし、1980年代後半に冷戦が終結すると、米国は軍縮協定に従ってあらゆる種類のプルトニウムの生産を停止した。
「プルトニウム238の大部分は、当時は国立研究所というよりも国防施設だったサヴァンナ・リヴァー・サイトで生産されたものでした」と、ワムは言う。かつて米国の核兵器の大半を生産していたサウスカロライナ州にある施設のことだ。サヴァンナ・リヴァー・サイトは現在、当時の活動によって敷地内に埋められた核廃棄物の影響で、地球上で最も汚染された場所のひとつとなっている。
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https://wired.jp/app/uploads/2020/08/01162952/Science_MAINIMAGEPIA23305-main-e1596267052241_w1920.webp
https://wired.jp/2020/08/01/nasas-mars-rover-will-be-powered-by-us-made-plutonium/