三木谷浩史「未来」
https://bunshun.jp/denshiban/series/%E4%B8%89%E6%9C%A8%E8%B0%B7%E6%B5%A9%E5%8F%B2%E3%80%8C%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%80%8D 2021/09/08
日本の技術者不足は本当に深刻だ 第11回
https:
//bunshun.jp/denshiban/articles/b1609
ワクチン接種のシステムを運用すればすぐにトラブルが起き、感染者の情報を管理する「COCOA」といったアプリケーションも結局はまともに開発できない……。そうしたシステムを社会の中で機能させられなかったことは、良い悪いという評価を下す以前に、現在の日本のソフトウェアの開発力を如実に表していると思う。
日本の「未来」を考えていく上で、この「技術者不足」というのはあまりに大きな課題だ。...
それでは、日本の技術者不足はどれくらい深刻な問題なのか。それを理解するためには、大学などで情報工学を専攻する学生の卒業数を見ればいい。
例えば、日本の情報工学専攻の卒業生は、1万人から1万5000人程度だと思われる。対して、アメリカでは約40万人、これが中国になると100万人となり、さらにインドは200万人という規模になるはずだ。
少なくともコンピュータ関連のエンジニアは、世界に数百万人いるうちの1万人程度しか日本では生み出されていかない、ということ。国内で工学教育に力を入れたり、少子化対策をしたりすることは大切だが、実は日本の技術者不足はもはやそうしたレベルの話ではないのだ。
そうすると、この課題を乗り越えるための唯一の方法は、やはり「移民」を受け入れていく、ということのほかないだろう。
2021/09/15
移民受け入れの議論に必要な「2つの視点」 第12回
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//bunshun.jp/denshiban/articles/b1644
とくに近年では新規のエンジニアの採用において、楽天でも外国籍の人の採用数は右肩上がりだ。今では日本のオフィスに新しく入ってくる6〜7割が外国人で、ロシアや中国から来ているエンジニアも多い。楽天モバイルやグループのCTOもアメリカ人だ。...
それにしても、彼らの働き方に接しながらあらためて実感するのは、仕事の中でのディベートの激しさだ。議論が白熱すると「ここのアーキテクチャはこうだろう」「いや、違う。こうすべきだ」とまるで喧嘩のようにエンジニア同士がやり合い出し、僕が「まあ、まあ、落ち着こうよ」と仲裁しなければならなくなる場面もよくある。...
日本人のスタッフの中には、その丁々発止の様子を見て、「ここまで言いたいことを言っていいのか」と最初は感じる者もいるという。だが、育った国や文化が異なり、生い立ちも含めて様々なバックグラウンドを持つ人たちが、仕事で意見をぶつけ合うことはとても大切だ。
そうした関係性の中でオープンな議論が日々行われ、それぞれの意見や得意な分野の知識が入り混じっていく――それが新しい何かが生み出される土壌になっていくからである(それは楽天グループが英語を公用語としている理由にもかかわっている)。...
GAFAに代表される企業が次々に現れるアメリカを見ればよく分かる。それらの企業がビジネスのベースとしている「技術」の生まれる背景には、アメリカという国の持つダイバーシティがあるからである。...
そして、重要なのはビジネスにおける「イノベーション」だけを見ても、それは高度人材だけによって起こされているわけではない、という、考えてみれば当然の事実だ。...
アメリカやヨーロッパ、インドや中国、ベトナム……。優秀とされる「人材」もファンダメンタルワーカーも次の社会を作り出す成員であり、「最先端」の技術を持つ人々だけが「未来」を作り出していくわけではない。
「イノベーション」を起こすためには、異なる価値観が混ざり合うこと自体に意味がある。「文化」や「未来」というものが、様々なバックグラウンドを持つ人々の混然一体となった関係性の中から作られていくように。「ダイバーシティ自体がイノベーションをドライブする」とはそういうことだ。