性犯罪、法定刑引き上げ 改正刑法が成立 厳罰化へ
性犯罪を厳罰化する改正刑法は十六日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。強姦(ごうかん)罪の
法定刑引き上げや、起訴するのに被害者の告訴が必要となる「親告罪」規定の削除が柱。性犯罪に関する刑法の
大幅改正は、明治時代の制定以来約百十年ぶり。被害者らが実態に即した法改正を求めていた。七月十三日に施
行される見通し。
与党は慣例に反し、改正刑法より二週間遅く国会に提出された「共謀罪」法を先に審議入りさせたため、改正
刑法が衆院本会議で審議入りしたのは今月二日。参考人質疑は参院法務委員会でしか実施されず、審議時間は計
十二時間四十分。十八日の会期末をにらみ、駆け足での成立となった。
改正法は強姦罪の名称を「強制性交等罪」に変更。女性に限定されていた被害者に男性を含め、性交類似行為
も対象とする。法定刑の下限を懲役三年から五年に引き上げる。親告罪の規定をなくすのは強姦罪や強制わいせ
つ罪などで、施行前に起きた事件にも原則適用する。
◆被害者団体 成立後押し
性犯罪を厳罰化する刑法改正を後押ししたのは、性暴力被害者、支援者グループなど四団体でつくる「刑法性
犯罪を変えよう!プロジェクト」。性犯罪の罰則強化に「被害者の声を届けたい」と法案作成段階からかかわり
、今国会でも粘り強く成立を働きかけた。
十六日夕の参院本会議で、山本潤さんらメンバー五人は、傍聴席から採決を見守った。「反対0」で成立が表
示されると、小さくうなずき、笑顔とともに「対等な関係」を示す「イコールポーズ」もしてみせた。
山本さんは十三歳から七年にわたり、実父から性暴力を受けた。強迫症状や退行現象などの心的外傷(トラウ
マ)に悩まされた。
二〇一四年に性犯罪厳罰化の検討がスタートし、専門家の議論を見ていた山本さんは、被害者の声を法改正に
反映させる必要性を痛感。一五年「性暴力と刑法を考える当事者の会」を設立し、法制審議会に要望書を提出し
たりした。一六年秋には他の三団体と同プロジェクトを結成。計四十五人の与野党議員に早期成立を働きかけた
ほか、国会周辺や大学で集会を開いた。
今国会に刑法改正案が提出されたものの、法務委員会では改正組織犯罪処罰法の後回しに。プロジェクトは、
三万筆超の署名を金田勝年法相に渡すなど、働きかけ続けた。山本さんは十六日、本会議に先立つ参院法務委で
自ら参考人として出席。「性暴力の本質は、人をモノとして扱うこと。私たち(被害者)は心を、魂を殺される
」と訴えた。
山本さんらは、今回の改正がゴールとは考えていない。「抵抗を著しく困難にするほどの暴行や脅迫」を用い
た場合に限って処罰できると解釈される「暴行脅迫要件」が、手つかずで残ったためだ。記者会見した山本さん
は「(見直し規定がある)三年後に撤廃し、意思に反した性行為は犯罪と規定してほしい」と指摘。「被害の実
態を反映した改正になるよう、三年間駆け足で頑張りたい」と表情を引き締めた。 (安藤美由紀、北條香子)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017061702000126.html
性犯罪を厳罰化する改正刑法は十六日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。強姦(ごうかん)罪の
法定刑引き上げや、起訴するのに被害者の告訴が必要となる「親告罪」規定の削除が柱。性犯罪に関する刑法の
大幅改正は、明治時代の制定以来約百十年ぶり。被害者らが実態に即した法改正を求めていた。七月十三日に施
行される見通し。
与党は慣例に反し、改正刑法より二週間遅く国会に提出された「共謀罪」法を先に審議入りさせたため、改正
刑法が衆院本会議で審議入りしたのは今月二日。参考人質疑は参院法務委員会でしか実施されず、審議時間は計
十二時間四十分。十八日の会期末をにらみ、駆け足での成立となった。
改正法は強姦罪の名称を「強制性交等罪」に変更。女性に限定されていた被害者に男性を含め、性交類似行為
も対象とする。法定刑の下限を懲役三年から五年に引き上げる。親告罪の規定をなくすのは強姦罪や強制わいせ
つ罪などで、施行前に起きた事件にも原則適用する。
◆被害者団体 成立後押し
性犯罪を厳罰化する刑法改正を後押ししたのは、性暴力被害者、支援者グループなど四団体でつくる「刑法性
犯罪を変えよう!プロジェクト」。性犯罪の罰則強化に「被害者の声を届けたい」と法案作成段階からかかわり
、今国会でも粘り強く成立を働きかけた。
十六日夕の参院本会議で、山本潤さんらメンバー五人は、傍聴席から採決を見守った。「反対0」で成立が表
示されると、小さくうなずき、笑顔とともに「対等な関係」を示す「イコールポーズ」もしてみせた。
山本さんは十三歳から七年にわたり、実父から性暴力を受けた。強迫症状や退行現象などの心的外傷(トラウ
マ)に悩まされた。
二〇一四年に性犯罪厳罰化の検討がスタートし、専門家の議論を見ていた山本さんは、被害者の声を法改正に
反映させる必要性を痛感。一五年「性暴力と刑法を考える当事者の会」を設立し、法制審議会に要望書を提出し
たりした。一六年秋には他の三団体と同プロジェクトを結成。計四十五人の与野党議員に早期成立を働きかけた
ほか、国会周辺や大学で集会を開いた。
今国会に刑法改正案が提出されたものの、法務委員会では改正組織犯罪処罰法の後回しに。プロジェクトは、
三万筆超の署名を金田勝年法相に渡すなど、働きかけ続けた。山本さんは十六日、本会議に先立つ参院法務委で
自ら参考人として出席。「性暴力の本質は、人をモノとして扱うこと。私たち(被害者)は心を、魂を殺される
」と訴えた。
山本さんらは、今回の改正がゴールとは考えていない。「抵抗を著しく困難にするほどの暴行や脅迫」を用い
た場合に限って処罰できると解釈される「暴行脅迫要件」が、手つかずで残ったためだ。記者会見した山本さん
は「(見直し規定がある)三年後に撤廃し、意思に反した性行為は犯罪と規定してほしい」と指摘。「被害の実
態を反映した改正になるよう、三年間駆け足で頑張りたい」と表情を引き締めた。 (安藤美由紀、北條香子)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017061702000126.html