2017.12.11 16:00 NEWS ポストセブン
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税制改正に怒りを覚える理由は、徴税の手法だけでなく「使われ方」への不満と不信がある。安倍政権下では、国民から集めた血税が首相の“お友達”に利益をもたらすという構図が厳しく批判されている。いわゆる「モリカケ問題」はその象徴だったが、またしても似た構図の疑惑が浮上した。
12月5日、助成金詐欺の疑いでスーパーコンピューター開発会社「ペジーコンピューティング(以下、ペジコン)」の社長・齊藤元章容疑者(49)らが、東京地検特捜部に逮捕された。
経産省が所管する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は技術革新に取り組むベンチャー企業への助成事業を行なっているが、ペジコンもその対象となっていた。
「2013年度に高性能メモリーの開発事業で上限5億円の助成金が決定。ペジコンは約6800万円を先払いで受け取り、2014年2月に約7億7300万円の経費がかかったとする実績報告書を提出し、4億3100万円を受領した。だが、その実績報告書が虚偽だったと見られている」(捜査関係者)
最終的にペジコンが受け取ったのは約4億9900万円。“水増し請求”によって、上限5億円をほぼ満額手にしたことになる。
この事件はただの詐欺事件で終わらない可能性がある。経営者が「政権に近い」と見られているからだ。元経産官僚でかつてNEDOの担当課長だった古賀茂明氏が言う。
「政府機関が助成金を審査する場合、注意するのは対象企業の実績や能力の他、政権との距離です。ベンチャー企業でありながら多額の助成金を得ているペジコンは、政権と近いことは有名でした。その点は当然考慮されたはずです」
逮捕された齊藤容疑者とはどんな人物なのか。齊藤容疑者は新潟大学医学部などを経て東大医学部附属病院に医師として勤務。1997年に渡米し、医療機器ベンチャーを起業した。帰国後、10年に日本でペジコンを立ち上げると、みるみる頭角を現わし、2015年6月には関連企業と作った複数のスパコンが「電力効率ランキング」でトップ3を独占。医師出身の異色の経営者として注目を浴びていた。
「とくに麻生太郎・副総理と親しく、昨年7月に麻生氏が理化学研究所のスパコンを視察した際には、齊藤氏がわざわざ理研に行って案内した」(永田町関係者)
今年5月25日に開かれた参議院財政金融委員会では、「銀行法等の一部を改正する法律案」について議論がされた。そこで麻生氏は、将来的に金融業界を変える存在としてペジコンを紹介した。会議録にはこうある。
〈今、日本で今年も多分世界一になると思いますが、ペギーコンピューター(ママ)というのが出てきました(中略)そういったようなものが出てくるので、将来的な金融の方向性を大きく変えるのは間違いない〉
※週刊ポスト2017年12月22日号