米国が6月19日、同盟国イスラエルを批判する場として政治的に使われていることなどを理由に国連人権理事会からの離脱を表明した。
これに伴い、日本が人権理で対中国の最前線に立たされる可能性が出てきた。そもそも人権理では、中国が自国に有利に働く決議の採択を画策するなど、政治利用化が進んでおり、米国がそうした動きに最も厳しい対応を取ってきた。
離脱後は、人権擁護を重視する日本や欧州が中国の矢面に立つ場面が増えるとみられ、外務省幹部は「米国離脱の影響は小さくない」と話す。
人権理では3月、中国が提案した「互恵協力決議」が採択された。内容自体に大きな問題はなかったが、決議文の中には
「a community of shared future for human beings(人類運命共同体)」といった習近平国家主席が提唱する外交理念が盛り込まれていた。
日本の外務省筋は決議文の狙いについて「中国独自の外交方針に国際的なお墨付きを与えようとしていることは明らかだ」と分析する。
中国の狙いに最も鋭敏に反応したのは米国で、提案に対して「反対」を表明し、理事国による投票を要求した。人権理では、提案に対し異議を唱えなければ、コンセンサス(全会一致)で採択となる。
(中略)
結果は多数派工作に成功した中国の提案が過半数の支持を得て、採択された。外務省幹部は「今後、本音では『棄権』がよくても、ガツンと反対する米国がいないために、日本が『反対』に回る必要性が出てくるかもしれない」
と米国離脱の悪影響を危惧する。米国のヘイリー国連大使は19日の離脱表明に際し「(人権理は)人権侵害国の保護者であり、政治的偏向の汚水だめだ」と激しく批判したが、日本も人権理のあり方をめぐっては一家言を持つ。
(中略)
昨年11月の人権理では、韓国が求めた対日審査で慰安婦に関する教育について「将来世代が慰安婦問題を含め、歴史の真実を学べるように努力すべきだ」と主張し、人権理は日本政府に計217項目を勧告した。
政府はこれらに毅然と拒否・反論したとはいえ、特定の主張が当事者への検証もなく報告される制度的な欠陥があるといわざるを得ない。
それでも外務省幹部は「『批判をやめろ』と言い過ぎれば、本当に批判をしなくてはならない国に対して、十分な批判ができなくなる。耳が痛いことも我慢して聞いて、人権状況を改善していくのが本来の姿だ」と語る。
人権理では今年3月に北朝鮮人権状況決議がコンセンサスで採択されるなど、日本にとって悪いことだけではない。当面は欧州との連携に加え、米国が人権問題への関与を後退させることがないよう、働きかけていくほかなさそうだ。
産経ニュース
https://www.sankei.com/politics/news/180630/plt1806300001-n4.html
2018.6.30 01:00
これに伴い、日本が人権理で対中国の最前線に立たされる可能性が出てきた。そもそも人権理では、中国が自国に有利に働く決議の採択を画策するなど、政治利用化が進んでおり、米国がそうした動きに最も厳しい対応を取ってきた。
離脱後は、人権擁護を重視する日本や欧州が中国の矢面に立つ場面が増えるとみられ、外務省幹部は「米国離脱の影響は小さくない」と話す。
人権理では3月、中国が提案した「互恵協力決議」が採択された。内容自体に大きな問題はなかったが、決議文の中には
「a community of shared future for human beings(人類運命共同体)」といった習近平国家主席が提唱する外交理念が盛り込まれていた。
日本の外務省筋は決議文の狙いについて「中国独自の外交方針に国際的なお墨付きを与えようとしていることは明らかだ」と分析する。
中国の狙いに最も鋭敏に反応したのは米国で、提案に対して「反対」を表明し、理事国による投票を要求した。人権理では、提案に対し異議を唱えなければ、コンセンサス(全会一致)で採択となる。
(中略)
結果は多数派工作に成功した中国の提案が過半数の支持を得て、採択された。外務省幹部は「今後、本音では『棄権』がよくても、ガツンと反対する米国がいないために、日本が『反対』に回る必要性が出てくるかもしれない」
と米国離脱の悪影響を危惧する。米国のヘイリー国連大使は19日の離脱表明に際し「(人権理は)人権侵害国の保護者であり、政治的偏向の汚水だめだ」と激しく批判したが、日本も人権理のあり方をめぐっては一家言を持つ。
(中略)
昨年11月の人権理では、韓国が求めた対日審査で慰安婦に関する教育について「将来世代が慰安婦問題を含め、歴史の真実を学べるように努力すべきだ」と主張し、人権理は日本政府に計217項目を勧告した。
政府はこれらに毅然と拒否・反論したとはいえ、特定の主張が当事者への検証もなく報告される制度的な欠陥があるといわざるを得ない。
それでも外務省幹部は「『批判をやめろ』と言い過ぎれば、本当に批判をしなくてはならない国に対して、十分な批判ができなくなる。耳が痛いことも我慢して聞いて、人権状況を改善していくのが本来の姿だ」と語る。
人権理では今年3月に北朝鮮人権状況決議がコンセンサスで採択されるなど、日本にとって悪いことだけではない。当面は欧州との連携に加え、米国が人権問題への関与を後退させることがないよう、働きかけていくほかなさそうだ。
産経ニュース
https://www.sankei.com/politics/news/180630/plt1806300001-n4.html
2018.6.30 01:00