安倍晋三首相は10日夜、自民党衆院議員のパーティーで東日本大震災の被災者を傷つける発言をした桜田義孝五輪相を事実上、更迭した。桜田氏はこれまでも失言を重ねており、与党内でも「辞任は当然だ」との受け止めが広がっている。
安倍内閣では国土交通副大臣だった塚田一郎参院議員が5日に道路整備を巡る「忖度(そんたく)」発言で辞任したばかり。安倍首相は早期の事態収拾を図ったが、「辞任ドミノ」は21日投開票の衆院大阪12区と沖縄3区の両補欠選挙や、統一地方選後半戦などに影響を与える可能性がある。
後任には鈴木俊一前五輪相を再起用する。桜田氏は10日夜、自民党の高橋比奈子衆院議員(比例東北ブロック)のパーティーで岩手県出身の高橋氏への支援を求める中で「(震災からの)復興以上に大事なのは高橋さんだ」と語った。
桜田氏は発言後、記者団にいったんは「記憶にありません」と釈明した。だが、失言が伝わると、安倍首相や菅義偉官房長官ら政権幹部が対応を協議。目前に迫る衆院補選や夏の参院選などへの影響を最小限にとどめるには早期に幕引きを図るのが得策と判断、失言から2時間ほどで桜田氏の辞任が決まった。
桜田氏はかねてその発言が問題視されていた。昨年の臨時国会では東京五輪でのサイバーセキュリティーを担当するにもかかわらず「自分でパソコンを打つことはない」などと発言。今年2月に競泳の池江璃花子選手が白血病を公表した際には「がっかりしている」と語り、五輪相としての資質に疑問の声が上がった。
9日の参院内閣委員会でも、東日本大震災の被災地、宮城県石巻(いしのまき)市を「いしまき市」と言い間違える答弁を繰り返し、批判を浴びたばかりだった。
「さすがにこれはもたない。まあ、それでも参院選前でなくてまだ良かったよ」。桜田氏の事実上の更迭を決めた後、安倍首相は周辺にこう漏らした。
安倍首相をはじめ政権幹部が警戒するのが、2007年の第1次政権時の参院選の再来だ。閣僚のスキャンダルや辞任が相次ぎ、「消えた年金」問題による逆風もあってこの年の夏の参院選で自民党は歴史的惨敗を喫し、安倍首相はほどなく健康問題を理由に退陣した。
「今は新元号の歓迎ムードや野党が弱すぎることから内閣支持率は堅調だ。参院選まで時間もある。今後は外交分野で見せ場も続く。今回のスピード決着で十分立て直しは可能だ」。安倍首相の側近議員はこう語る。
だが、この時期の辞任ドミノは攻め手に乏しかった野党には格好の攻撃材料となった。立憲民主党の枝野幸男代表は「幾度となく問題があると指摘されながらかばい続けていた首相の責任が問われる」と非難した。与党でも公明党の山口那津男代表が「発言は到底許されない。怒りを禁じ得ない」と語るなど危機感をあらわにしている。
「参院選が怖いのは、有権者が政権におきゅうを据える機会にしがちなこと。長期政権の緩みと受け取られるのは相当まずい」。ある自民幹部はこう漏らす。
安倍首相は11日午前、「内閣全員がより一層身を引き締めていかないといけない」と記者団に語ったが、有権者がこれまで以上に閣僚や政権運営に厳しいまなざしを向けるのは間違いない。
安藤 毅
日経ビジネス
4/11(木) 18:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190411-61733976-business-pol
安倍内閣では国土交通副大臣だった塚田一郎参院議員が5日に道路整備を巡る「忖度(そんたく)」発言で辞任したばかり。安倍首相は早期の事態収拾を図ったが、「辞任ドミノ」は21日投開票の衆院大阪12区と沖縄3区の両補欠選挙や、統一地方選後半戦などに影響を与える可能性がある。
後任には鈴木俊一前五輪相を再起用する。桜田氏は10日夜、自民党の高橋比奈子衆院議員(比例東北ブロック)のパーティーで岩手県出身の高橋氏への支援を求める中で「(震災からの)復興以上に大事なのは高橋さんだ」と語った。
桜田氏は発言後、記者団にいったんは「記憶にありません」と釈明した。だが、失言が伝わると、安倍首相や菅義偉官房長官ら政権幹部が対応を協議。目前に迫る衆院補選や夏の参院選などへの影響を最小限にとどめるには早期に幕引きを図るのが得策と判断、失言から2時間ほどで桜田氏の辞任が決まった。
桜田氏はかねてその発言が問題視されていた。昨年の臨時国会では東京五輪でのサイバーセキュリティーを担当するにもかかわらず「自分でパソコンを打つことはない」などと発言。今年2月に競泳の池江璃花子選手が白血病を公表した際には「がっかりしている」と語り、五輪相としての資質に疑問の声が上がった。
9日の参院内閣委員会でも、東日本大震災の被災地、宮城県石巻(いしのまき)市を「いしまき市」と言い間違える答弁を繰り返し、批判を浴びたばかりだった。
「さすがにこれはもたない。まあ、それでも参院選前でなくてまだ良かったよ」。桜田氏の事実上の更迭を決めた後、安倍首相は周辺にこう漏らした。
安倍首相をはじめ政権幹部が警戒するのが、2007年の第1次政権時の参院選の再来だ。閣僚のスキャンダルや辞任が相次ぎ、「消えた年金」問題による逆風もあってこの年の夏の参院選で自民党は歴史的惨敗を喫し、安倍首相はほどなく健康問題を理由に退陣した。
「今は新元号の歓迎ムードや野党が弱すぎることから内閣支持率は堅調だ。参院選まで時間もある。今後は外交分野で見せ場も続く。今回のスピード決着で十分立て直しは可能だ」。安倍首相の側近議員はこう語る。
だが、この時期の辞任ドミノは攻め手に乏しかった野党には格好の攻撃材料となった。立憲民主党の枝野幸男代表は「幾度となく問題があると指摘されながらかばい続けていた首相の責任が問われる」と非難した。与党でも公明党の山口那津男代表が「発言は到底許されない。怒りを禁じ得ない」と語るなど危機感をあらわにしている。
「参院選が怖いのは、有権者が政権におきゅうを据える機会にしがちなこと。長期政権の緩みと受け取られるのは相当まずい」。ある自民幹部はこう漏らす。
安倍首相は11日午前、「内閣全員がより一層身を引き締めていかないといけない」と記者団に語ったが、有権者がこれまで以上に閣僚や政権運営に厳しいまなざしを向けるのは間違いない。
安藤 毅
日経ビジネス
4/11(木) 18:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190411-61733976-business-pol