大学入学共通テストでの記述式問題の延期を発表した萩生田光一文部科学相については、「政治とカネ」を巡る問題も発生している。本誌は先週号で、萩生田氏が地元の有権者を対象にグラウンドゴルフ大会などスポーツイベントを開催し、赤字分を補てんしていた事実を報じた。その行為が公職選挙法や政治資金規正法に違反する可能性があることを指摘したが、さらなるカネ絡みの「疑惑」が浮上している。
萩生田氏の地元・東京都八王子市にA社というビルメンテナンス会社がある。萩生田氏の後援者として地元では有名で、同社代表取締役会長が運営するブログを見ると、会長は萩生田氏の政治団体「はぎうだ光一後援会」の事務局長などを務めていることがわかる。17年12月27日のブログには、自民党本部で執務する萩生田氏の写真を添えて、次のように記している。
<久しぶりに自民党本部に行って来た。そして、自民党幹事長代行の萩生田光一衆議院議員と会ってきた。中々時間が合わなかったので、昼に合わせて打ち合わせをしてきたのだ>(肩書は当時)
14年4月には「桜を見る会」に出席したことも報告している。そんな萩生田氏にとっての蜜月企業に“凶行”が起きたのは、同年6月のことである。A社の社員ら3人が、知人の男性(当時33)を市営プールの事務所に呼び出し、バットで殴打するなどして殺害。プール近くに遺体を埋めたとして、警視庁高尾署は出頭してきたA社社員を殺人と死体遺棄容疑で逮捕した。動機は交友関係のトラブルが原因で、現場となった市営プールは同社が市から指定管理業務を請け負っていた。
元八王子市議の山口和男氏が事件当時を振り返る。
「八王子市の公共施設で起きた事件ですから、市議会でも取り上げられました」 特に問題になったのは、市の請負業務に係る指名停止処分が14年9月から12月までのわずか3カ月間だったことだ。山口氏は当時、この問題を議会で追及したという。
「社員が重大事件を起こせば指名停止どころか自ら辞退するのがスジです。それをたった3カ月の指名停止で、市長以下が済ませてしまった。当時の市の幹部は『短すぎる』と怒っていましたが、A社の会長と萩生田氏が親しい関係にあるのは八王子では有名なので、忖度があったのか、それ以上、追及されなかった」
また、萩生田氏の地元事務所のうち1室がA本社ビルに入居しており、毎月18万円が「事務所家賃」として支出されている。
A社は、萩生田氏が代表を務める自民党東京都第24選挙区支部に14年1〜11月、指名停止期間も含めて毎月5千円ずつ献金している。だが、ちょうど処分が明けた12月5日付で100万円も献金していた。もっとも14年12月には総選挙があったので、萩生田氏の政治資金収支報告書を見ると、他にも選挙月には献金額が増えている企業もあるのだが……。
萩生田氏の事務所は文書で次のように答えるのみだった。
「政治資金は法令に従い適正に処理し、その収支を報告しているところです。ご指摘の寄付も法令に従った適正な寄付であることはご存じのとおりです。ご指摘の事実があったことを踏まえ、今後もさらにコンプライアンスを徹底し、政治活動に専念して参りたいと思います」
指名停止処分業者から献金を受け、発覚後、道義的責任を考慮して大臣たちが献金を返金したというのはままある話。いまのうちに清廉さをアピールしておくのが身のためでは。(今西憲之 本誌 上田耕司)
※週刊朝日 2019年12月27日号より抜粋
2019/12/17 17:49
https://dot.asahi.com/wa/2019121700017.html