自民党の河井克行前法相の妻、案里参院議員(広島)が初当選した昨年7月の参院選挙を巡り、夫妻の秘書2人が公選法違反(買収)の罪で起訴された事件の捜査が急展開している。
夫妻が公示前に広島県議と同市議ら約30人に現金をばら撒き、その見返りに参院選で票の取りまとめを依頼していた疑いが浮上し、広島地検が一斉に任意聴取しているのだ。
「これです、克行氏が持ってきたカネは……」
広島市議のAさんがバックから取り出した白い封筒。そこには、新札で現金30万円は入っていた。
「昨年の市議選の最中に、克行氏が事務所にきて『激励です、茶菓子代わりに』とお茶菓子のカゴにポンと置いて帰った。選挙中で忙しくて、あとで確認したら30万円も入っていた。そのうち返そうと思っていたら、案里さんの買収騒動になってしまって返しそびれてしまった」
こううなだれるAさん。その現金は「買収」を意図する可能性があったというのだ。Aさんは3月末に広島地検の事情聴取を受けた。
「朝7時半に家のインターホンが鳴って誰かと出ると、広島地検だという。逮捕されるのか、心当たりないなと思っていたら、河井克行、案里夫妻と選挙のことという。服を着替えて、広島地検の車で検察庁に連れて行かれた」
広島地検は河井夫妻などへの家宅捜索と取り調べで、たくさんの証拠を持っていたという。その日、7時間近く取り調べを受けたというAさん。
白い封筒に入っていた30万円を持参し、検事に見せ、状況を説明した。
携帯電話の任意提出を求められ、応じたという。
「30万円をもらったのは、激励という趣旨だと話しました。けど、検事は『案里氏が自民党から参院選出馬することになり、その支援のための30万円』と調書に勝手に書くので『そりゃ、検事の意見でこちらは言ってないと押し問答になった。そこは削除してもらったが、検事の様子から案里氏の選挙で、河井夫妻が金配って買収に動くという狙いで捜査しているのがよくわかった。私はまんまと引っかかってしまったのかな。議員バッジを外すことも、やむなしと覚悟しています」(Aさん)
事情聴取後、昨年もらった30万円は克行氏の政党支部からの献金として政治資金収支報告に新たに記載したという。
さらに広島県大竹市の入山欣郎市長と三原市の天満祥典市長が広島地検から事情聴取を受けたことも明らかになった。
捜査関係者によれば、ウグイス嬢への運動員買収で逮捕された克行氏の政策秘書、高谷真介被告と案里氏の公設秘書、立道浩被告の2人を3月24日に起訴して以降、捜査のピッチを上げているという。
「市長や県議の捜査をはじめた。多い日では、1日に5〜6人の調べをしています。取り調べの日に供述調書を作成して、携帯電話の任意提出を受けている議員もいます」(捜査関係者)
だが、前出のAさんはこう話す。
「しかし、検事は私らのような小物を捕まえても仕方ない。もっと上のえらい人を狙っているような気もしました。X県議じゃないか…」
ターゲットとみられるX県議は、広島県議会の“重鎮”とされる大物で、河井夫妻との親しい関係にあった人物だ。1月に河井夫妻の事務所などが家宅捜査された同じ時期にX県議の事務所にも、広島地検は強制捜査に入ったという。
「1月にウグイス嬢の捜査の時から『自民党本部から検察に圧力をかけてもらっている』などと言い、えらく気にしていた。10回近く、事情聴取をされてるような話をしていた。X県議が河井夫妻とも仲がいいのは、有名です。東京の検察OBの弁護士がすでにX県議の代理人になっているそうだ」(広島の自民党関係者)
本誌の取材でも、克行氏からカネを受け取ったという市議や県議がいる一方で、案里氏から受け取ったという人もいた。
「ポイントは克行氏と案里氏、どちらも直接、県議らに現金を渡しているという供述があること。2人とも公職選挙法の買収で立件の可能性がある。克行氏と案里氏が、手分けして県内の県議、市議をまわっていたことは押収した日程表や携帯電話のデータなど証拠から明らかだ。そこからみて、現金を渡したのは30人ほどいるんじゃないか」(捜査関係者)
2に続く
週刊朝日
2020.4.4 14:00
https://dot.asahi.com/wa/2020040400011.html
河井前法相が手渡した現金30万円(撮影・今西憲之)
夫妻が公示前に広島県議と同市議ら約30人に現金をばら撒き、その見返りに参院選で票の取りまとめを依頼していた疑いが浮上し、広島地検が一斉に任意聴取しているのだ。
「これです、克行氏が持ってきたカネは……」
広島市議のAさんがバックから取り出した白い封筒。そこには、新札で現金30万円は入っていた。
「昨年の市議選の最中に、克行氏が事務所にきて『激励です、茶菓子代わりに』とお茶菓子のカゴにポンと置いて帰った。選挙中で忙しくて、あとで確認したら30万円も入っていた。そのうち返そうと思っていたら、案里さんの買収騒動になってしまって返しそびれてしまった」
こううなだれるAさん。その現金は「買収」を意図する可能性があったというのだ。Aさんは3月末に広島地検の事情聴取を受けた。
「朝7時半に家のインターホンが鳴って誰かと出ると、広島地検だという。逮捕されるのか、心当たりないなと思っていたら、河井克行、案里夫妻と選挙のことという。服を着替えて、広島地検の車で検察庁に連れて行かれた」
広島地検は河井夫妻などへの家宅捜索と取り調べで、たくさんの証拠を持っていたという。その日、7時間近く取り調べを受けたというAさん。
白い封筒に入っていた30万円を持参し、検事に見せ、状況を説明した。
携帯電話の任意提出を求められ、応じたという。
「30万円をもらったのは、激励という趣旨だと話しました。けど、検事は『案里氏が自民党から参院選出馬することになり、その支援のための30万円』と調書に勝手に書くので『そりゃ、検事の意見でこちらは言ってないと押し問答になった。そこは削除してもらったが、検事の様子から案里氏の選挙で、河井夫妻が金配って買収に動くという狙いで捜査しているのがよくわかった。私はまんまと引っかかってしまったのかな。議員バッジを外すことも、やむなしと覚悟しています」(Aさん)
事情聴取後、昨年もらった30万円は克行氏の政党支部からの献金として政治資金収支報告に新たに記載したという。
さらに広島県大竹市の入山欣郎市長と三原市の天満祥典市長が広島地検から事情聴取を受けたことも明らかになった。
捜査関係者によれば、ウグイス嬢への運動員買収で逮捕された克行氏の政策秘書、高谷真介被告と案里氏の公設秘書、立道浩被告の2人を3月24日に起訴して以降、捜査のピッチを上げているという。
「市長や県議の捜査をはじめた。多い日では、1日に5〜6人の調べをしています。取り調べの日に供述調書を作成して、携帯電話の任意提出を受けている議員もいます」(捜査関係者)
だが、前出のAさんはこう話す。
「しかし、検事は私らのような小物を捕まえても仕方ない。もっと上のえらい人を狙っているような気もしました。X県議じゃないか…」
ターゲットとみられるX県議は、広島県議会の“重鎮”とされる大物で、河井夫妻との親しい関係にあった人物だ。1月に河井夫妻の事務所などが家宅捜査された同じ時期にX県議の事務所にも、広島地検は強制捜査に入ったという。
「1月にウグイス嬢の捜査の時から『自民党本部から検察に圧力をかけてもらっている』などと言い、えらく気にしていた。10回近く、事情聴取をされてるような話をしていた。X県議が河井夫妻とも仲がいいのは、有名です。東京の検察OBの弁護士がすでにX県議の代理人になっているそうだ」(広島の自民党関係者)
本誌の取材でも、克行氏からカネを受け取ったという市議や県議がいる一方で、案里氏から受け取ったという人もいた。
「ポイントは克行氏と案里氏、どちらも直接、県議らに現金を渡しているという供述があること。2人とも公職選挙法の買収で立件の可能性がある。克行氏と案里氏が、手分けして県内の県議、市議をまわっていたことは押収した日程表や携帯電話のデータなど証拠から明らかだ。そこからみて、現金を渡したのは30人ほどいるんじゃないか」(捜査関係者)
2に続く
週刊朝日
2020.4.4 14:00
https://dot.asahi.com/wa/2020040400011.html
河井前法相が手渡した現金30万円(撮影・今西憲之)