2018.10.24 14:35
菅官房長官は23日夜、緊急会見を開き、シリアで武装勢力に拘束されていたジャーナリスト・安田純平さんとみられる男性が解放され、トルコ・アンタクヤの入管施設にいるとカタール政府から情報が入ったことを明らかにした。政府は本人確認を急ぎ、アンタクヤに大使館職員を派遣。確認は日本時間の午後3時以降になるという。
安田さんは2015年6月、内戦取材のためシリアに入り音信不通に。2016年3月、インターネットに安田さんとみられる男性の動画が投稿され、拘束が明らかになった。2018年7月には、銃を持った2人の人物の前にひざまずき「とてもひどい環境にいます」と話す安田さんの動画も公開された。
拘束から約3年半、安田さんはなぜいま解放されたのか。AbemaTV『けやきヒルズ』では、イラク戦争取材を機に安田さんと親交があるという、ジャーナリストの綿井健陽さんに見解を聞いた。
安田さん解放の情報に「まだ顔や表情、声を直接聞いたわけではないので、喜ぶ準備をしているような感じ。とにかく長かった」と心境を語る綿井さん。安田さんは「ヌスラ戦線」と呼ばれるシリア反政府勢力に拘束されていたとみられるが、
その点について「イスラム国(IS)と違って、基本的に外国人の非戦闘員は殺害しないというグループ。身代金によって解放されるケースの方が多かったので、殺害されることはないと思っていた」という。
安田さんは反政府戦力“最後の主要拠点”であるイドリブにいたとされるが、今年9月、ロシアとトルコがイドリブに非武装地帯を設置することで合意した。これが安田さん解放の大きな要因だったとし、
「いわば“停戦”のような状態になって、その間に武装グループが交渉しやすくなるだろうし、身柄の引き渡し等も含めて安全を確保したうえで交渉ができるのではないかと予測していた」と述べた。
一方、解放に3年半がかかったことについては日本政府の対応に疑問があるとし、「9月に現地から安田さん解放の交渉が行われているという情報が入っていたので、そこに日本政府が関わっていたのかもしれないが、3年という期間でみると政府が積極的に解放の交渉を働きかけているようにはみえなかった。
安田さんの前後に拘束された外国人が半年〜1年で解放されている中で、なぜ安田さんだけこんなに長引いてしまったのか。そこは解放の経緯を詳しく調べる必要がある」とした。
ジャーナリストの拘束については、その職業柄「自己責任」という論調もあり、ネットでは安田さんをバッシングするような意見もある。その点について綿井さんは、「外国ではほとんどみられない、日本だけの特異な現象。例えばフランスでも、
NGOのスタッフや報道関係者が拘束されたり殺害されたりすることはあるが、社会は“殉職”というコンセンサスで過度なバッシングは起きない。歴史の違いみたいなものは事件が起きる度に感じる」とコメント。拘束は“フリージャーナリストだから”起きる特有な現象ではないとし、
「事件から何を学ぶか、どういう反応をすべきか、防ぐために何ができるかを考えるべき。批判は甘んじて受け入れなければいけないが、過度なバッシングや家族・親族への攻撃や脅迫は決して許されない」と主張した。
では、解放された安田さんに今後どのようなことを望むのか。綿井さんは「ある意味サバイバー、生存者だと思うので、まずはゆっくり休んでもらって、そこで見たものを日本社会に伝えてもらいたい。そうすれば直接話が聞けて、議論ができると思う」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
https://abematimes.com/posts/5071613